杉本清の実況スタイルを変えたタイテエム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 01:42 UTC 版)
「タイテエム」の記事における「杉本清の実況スタイルを変えたタイテエム」の解説
タイテエムが優勝した天皇賞(春)において、関西テレビで実況した杉本は「四白流星タイテエム」「無冠の貴公子に春が訪れます」という名実況を残しているが、この裏で大変肝を冷やす体験をしていた。 当時の競馬実況は、双眼鏡で馬群を追いながら実況するスタイルが主流であった。とは言え、このころになるとテレビ撮影用のカメラも進化しており、杉本もたびたび競馬番組のプロデューサーからカメラで撮影された映像を利用した実況を指示されていたが、この時点では半信半疑だったこともありモニターでの実況はテスト扱いレベルであった。 このような状況で始まった杉本の天皇賞実況であるが、この天皇賞でとくにタイテエムに重きを置いて実況していた杉本は、京都の第3コーナーの坂の手前で「タイテエムは後ろから2頭目」と実況したあと、タイテエムの居場所を見失ってしまった。レース映像を見ると、タイテエムは坂の下りから仕掛けて第3コーナーから第4コーナーにかけては馬群の一番外側を回っているが、タイテエムを含む各馬は泥でメンコも勝負服も真っ黒になり、実況席から遠い位置であったこともあり、双眼鏡で各馬を見分けるには難しい状況だった。杉本はここで「15頭が固まった、タイテエムもこの集団の中」と、微妙な言い回しの実況をしているが、その瞬間、テレビの画面には馬群の外側を捲ってきたタイテエム(ゼッケン番号5番)が大写しになっていた。そのような事情を露知らない杉本は、直線に入るといったんは「タイテエム来た」と言ったものの、そのすぐあとでは「一番外を通ってタイテエムか」「外を通ってタイテエムか、タイテエムか」と実況している。残り100メートルほどで、ようやく先頭がタイテエムであると確信し、「四白流星、タイテエム、タイテエムだ!タイテエム先頭だ!タイテエム先頭、タイテエム、無冠の貴公子に春が訪れます!タイテエム1着!タイテエム1着!」と実況した。 杉本自身は、この時点ではタイテエムを一時見失ったという自覚はなかったが、レース翌日の通勤途中で見知らぬ競馬ファンと思しき人間に、「あなた、タイテエムを見失っていたでしょう?」といきなり訊ねられた。杉本はその場はとりあえず取り繕ったものの、関西テレビに出社してレース映像を改めて確認。しどろもどろな実況の裏で大写しになっているタイテエムを見て、ようやく自分が実況中にタイテエムを見失っていたことに気付いたのであった。このアクシデントでカメラの高性能を認識させられて以降、杉本の実況スタイルは従来の双眼鏡重視の実況スタイルからモニター重視の実況スタイルに移っていき、以後それが競馬実況の主流として定着していった。
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