月が綺麗ですね
別表記:月がきれいですね
「月が綺麗ですね」とは、英語の「I love you.」の翻訳例であり「遠回しな愛の告白」を意味する台詞として知られている表現である。夏目漱石がこのように翻訳した、という逸話によってよく知られている。ただし、漱石がこう述べたという確たる証拠はない。
夏目漱石の逸話は、おおむね次のような趣旨である。……英語の「I love you.」を普通に和訳するながら「私はあなたを愛している」とか「あなたが好きだ」という表現になる。しかしながら、日本人はそのような直接的な愛の告白は口にしない。もっと婉曲的に、たとえば「月がきれいですね」とでも訳した方が奥ゆかしくて日本人的でよい。…… このようなことを夏目漱石が語ったとされる。
世間的にはこの「月が綺麗ですね」の含蓄は夏目漱石の逸話として知られているが、実際のところ、これが漱石の発言であることを裏付ける典拠はない。この逸話(噂話)について言及した出版物も、せいぜい1970年代(漱石の死後半世紀以上も後)までしか遡れない。そうした状況から、《「I love you.」を「月がきれいですね」と訳したのは夏目漱石である》という設定は後世の創作であろうと推測されている。
「月が綺麗ですね」は、もちろん文字通りに、冴えた月を眺めて愛でる台詞として用いられることもある。
「月が綺麗ですね」の返し方
月夜に二人きりで居て「月が綺麗ですね」と言われたら、それは愛の告白である可能性がある。もっとも、愛の告白はでなく、ただの感想である可能性もある。
あるいは、ただの感想だよ~という逃げ道を用意した愛の告白である可能性もある。
「死んでもいいわ」
もし相手が男性で、明らかに漱石の逸話を知った上で愛の告白として「月が綺麗ですね」と告げてきた場合に、愛の告白を受け入れて(その逸話が真偽不明という部分をスルーしつつ)理知的に返事するなら、「死んでもいいわ」という返し方が最適といえる。この「死んでもいいわ」は二葉亭四迷がロシア文学における「告白を受け入れた女性の返答」を大和撫子風の返答に勘案した台詞である。「死んでもいいわ」と返すことで「蘊蓄返し」を実現できるのである。
「そうですね綺麗ですね(すっとぼけ)」
もし相手が明らかに漱石の逸話を知った上で愛の告白として「月が綺麗ですね」と告げてきた場合、告白を受け入れないなら、真意をあえて汲み取らず、文字通り「月が綺麗かどうか」に着眼して返答すれば、遠回しに突っぱねることができる。「あんまり綺麗には見えない」と否定的な見解を返せば、拒絶のニュアンスを含めることもできる。
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