時計の速度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/01 09:14 UTC 版)
ラジカル時計反応の駆動力は、転位する能力である。一般的なラジカル時計には、ラジカル環化反応、開環反応、1,2-転移などがある。一般的な転位反応には、5-ヘキセニルの環化反応とシクロプロピルメチルの開環反応がある。 5-ヘキセニルラジカルは、エントロピー的にもエンタルピー的にも6員環の可能性よりも有利なため、環化反応を起こして5員環を生成する。 この反応の速度定数は、298 Kで2.3×105 s−1である。 シクロプロピルメチルラジカルは、環ひずみを取り除きエンタルピー的にも有利な非常に速い開環反応を起こす。 この反応の速度定数は、298 Kで8.6×107 s−1である。 ラジカル反応の絶対的な速度定数を求めるためには、1級アルキルなどのラジカル群ごとに単分子時計反応を時間的に校正する必要がある。EPR分光法を用いることで、単分子反応の絶対的な速度定数をさまざまな温度で測定することができる。 そして、アレニウスの式を適用することで、ラジカル時計反応を行う特定の温度における速度定数を算出することができる。 ラジカル時計を使って反応を研究する場合、その転位反応速度を決定するときと同じであるという暗黙の前提がある。様々な溶媒中でのシクロブチルメチルと5-ヘキセニルの転位反応を理論的に研究したところ、その反応速度は溶媒の性質によってごくわずかな影響を受けるだけであった。 ラジカル時計の速度は、どのような種類の置換基を付けるかによって、増減を調整することができる。下の図では、ラジカル時計にさまざまな置換基を付けた場合の速度を示している[出典無効]。 XYk (s−1)Ph Ph 5x107 OCH3 H 1.4x105 OCH3 CN 2.5x108 CN H 1.6x108 ラジカル時計の一般的なクラスと特定の置換基を選択することで、幅広い速度の反応を研究するのに適した速度定数を持つものを選ぶことができる。これまでに10−1から1012 M−1 s−1までの反応がラジカル時計を用いて研究されている。
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