明代:完成直前の断片
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:55 UTC 版)
「西遊記の成立史」の記事における「明代:完成直前の断片」の解説
14世紀半ば元朝を追って、新たに明朝が成立(1368年)。明代中期(16世紀)には印刷出版文化が普及し、通俗小説は隆盛期を迎えることとなる。これまでに形成された西天取経物語も、小説としての完成に向けて変化の度を加速させていくが、その最終過程となる明代前期の西遊記関連資料は多くが散佚しており、断片的にしか知ることができない。 明の建国者である太祖朱元璋以来、明朝では神仏や皇帝を揶揄することを禁止し、多くの文字禍(筆禍事件)が生じた。永楽9年(1411年)には帝王・聖賢を冒涜する内容の詞曲・雑劇をすべて廃棄せよとの布告が発せられる。そこで仏教と関連深い元本西遊記も問題となり、版元たちは改作を迫られることとなる。特に唐太宗が兄を殺して地獄送りとなる段と、狂言回しの滑稽なキャラクターとして登場した豚の「朱八戒」が明室と同じ朱姓であったことは重大であり、前者は太宗が玄武門の変と切り離されて竜王を見殺しにした罪に改められ(後述)、後者は朱(zhū)と同音で豚を表す「豬(猪)」に変更された。この段階の物語を「旧本西遊記」と呼ぶが、やはり完結した現存の刊本としては発見されていない。上記のような細かい変更はあるが、概ね元本西遊記と大差のない内容だったと推測される。 現在存在が確かめられる最古の刊本である世徳堂本(1592年)に至るまでの、どこかの時点で『西遊記』は小説として成立したはずであるが、残存資料がほとんどないため、詳細は不明である。ここではその過程を推測しうる断片について紹介する。
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