日本語の唇音退化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 04:13 UTC 版)
「は行#音韻史」も参照 日本語の唇音である「ハ行」音をめぐって起きてきた変化は、やはり子音弱化の過程であったと概観することができる。その過程はおおむね以下のようなものであった。 定説により、日本語ハ行の子音は当初 [*p] であった可能性が高いとされる。奈良時代頃までにはこれが摩擦音 [ɸ] (ファフィフフェフォのような音)へと変化していた。 中古期にはハ行転呼と呼ばれる大きな変化があり、語頭以外(語中および語尾)のハ行子音 [ɸ] に弱化が起こって、[w] をもつワ行音へと合流した。 続いて、ワ行のうち、鎌倉時代には「ヰ、ヱ」 wi, we が、江戸時代初期には「ヲ」 wo が唇音を失い、「イ、エ、オ」 i, e, o へと合流した。 → 詳細についてはゐ ゑ をの各項を参照。 最後に、近世に入る頃、語頭に残っていた [ɸ] 音にも(フ音以外に)変化が生じて、一般に [ha, çi, ɸɯ, he, ho] (ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ)と記述されるような、現在の音形に近い形が誕生した。 以下に一例を示し、以上の変化を通観してみる。 花 : ハナ ( 上古 *pana > 奈良時代~江戸時代初期 ɸana > 江戸時代中期~ hana ) 貝 : カヒ > カイ ( 上古 *kapi > 奈良時代~平安時代 *kaɸi > 平安時代~鎌倉時代 *kawi > 鎌倉時代後期~ kai ) 各時代の詳細については上代日本語や中古日本語の各項目、また半濁音、ハ行転呼、日葡辞書などの各項目をそれぞれ参照されたい。
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