文化人類学的観察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 13:51 UTC 版)
一夫多妻制は世界的にかなり広範に観察されるが、その成立要因については多様な説が並立しており、単純に論ずることはできないものの、原始的な成立要因という論点においての婚姻適齢期の両性の人口不均衡を原因とする説は否定されている。 一夫多妻制を形態の面から観察する場合、「姉妹型一夫多妻制」と「非姉妹型一夫多妻制」に大きく分けることができる。 姉妹型一夫多妻制は一人の男性が姉妹を妻として娶る婚姻の形態である。姉妹型一夫多妻制は社会的階層分化の進展にともなって減少する場合が多く、原始社会で多い一方で古代から減少する。姉妹型一夫多妻制が婚姻する双方の両親の結合を重視する社会において、婚姻を社会的紐帯の非常に重要な要素とみなし、社会的安定性の担保としたためと考えられる。社会の階層分化や権威の発達にともない、このような結合の重要性が比較的減退していき、姉妹型一夫多妻制が一般的にはあまり見られなくなってゆく。古代においても経済的に上層に位置する人々のあいだでは遺制を残していることもあるが、中世に入るとほとんどみられない。 一方、非姉妹型一夫多妻制は、単に妻たちが姉妹ではないというだけであって非常に広範なものであり、一概に論ずることはできない。冒頭の語義定義にあるように、婚姻の定義の範囲によって妻が一人で妾が複数という状態を一夫多妻制とみるかどうかが変容するからである。法的・制度的側面から考慮した場合、妾を持つことが事実上認められている状態であっても一夫一妻制となる一方、社会的・人類学的側面から考慮した場合は一夫多妻制となる。この際着目すべきは、妻たちのあいだに存在する差異であるが、これも正妻と妾らという形態のほかに、多数の正妻、また正妻以下順次序列のある形態などさまざまである。したがって婚姻と同様、一夫多妻制についても、個別社会的文脈からの把握が中心とならざるを得ない。
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