救急救命士の現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 17:40 UTC 版)
平成24年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国791消防本部のうち790本部で、その運用率は99.9%である。救急救命士を運用している救急隊は年々増加し、全国4965隊の救急隊のうち95.9%にあたる4763隊となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は2万7827人であり、うち救急救命士として運用されている救急隊員は2万2118人である。 医療専門職がいない院外で活動をする救急隊員や陸・海・空自衛隊員、海上保安庁職員などの活動可能範囲を広げ、救命率を上げるために創設された国家資格である。救命救急センターなどの病院での採用事例もあるが、病院外で認められている救急救命処置も法令上、院内で実施することは不可能である。 日本において、大半の救急業務を担っているのは消防である。このため、大学・専門学校などで救急救命士の資格を取得する場合、各自治体の消防職員採用試験に合格して、消防の救急隊員にならなければ、資格を活かすことは出来ない。しかし、消防の採用枠には限りがあるため、資格取得者または取得見込み者全員が採用されるわけではなく、民間の養成校を卒業したものの消防職員として就職しない者も多く存在する。このような救急救命士の中には、病院での看護助手や老人介護施設、警備会社、緊急車両ではない患者搬送車を運用する事業者などに就職するものも見られるが、非正規雇用者が多く、救急救命士の資格を有しながらそれを生かすことができていない現状である。この現状に対して、厚生労働省は救急救命士の活躍の場を消防以外に拡大する意向を示している。 米国のEMSやパラメディック(日本の救急救命士にあたる)は州ごとに資格があり、消防や警察などの公的機関に加えて民間の救急隊や娯楽施設でも活動しているが、日本の場合は救急救命士の資格が厚生労働省、救急隊の活動基準は消防庁と別個になっている事も職域拡大の障害となっている。消防機関に属する救急救命士は、公務員であるために職務行為以外の活動にあたる法律の改正や救急救命士の職域拡大に向けた活動や運動を行う事は公務員の性格上出来ないのも事実である。そこで、公務員以外の民間の救急救命士有資格者が中心となって一般社団法人日本救急救命士協会を設立し職域拡大に向けた活動を開始したり、常設消防がない宮崎県美郷町が救急搬送を民間の「日本救急システム」に委託し日本で初めての民間救急救命士による救急活動を開始するなど新たな動きもみられつつある。
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