政策との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/31 00:44 UTC 版)
貨幣錯覚の有無は、経済政策の効果を考える時に非常に重要となる。もし貨幣錯覚が存在すれば、たとえ同じだけのインフレを招いたとしても名目賃金を引き上げるような政策によって、人々の消費を増やすなど総需要を刺激することが可能となる。 短期的には貨幣錯覚が存在するならばインフレ率と失業率の間にトレードオフが発生するが、長期的には人々が間違い続けることはなく貨幣錯覚が解消されるとすると、インフレ率と失業率の間のトレードオフは消失する(→フィリップス曲線、自然失業率)。その結果、インフレ率を引き上げるような政策は短期的には失業率の改善を達成できるものの、長期的には失業率は下がらなくなりインフレだけが上昇してしまうという、望ましくない結果を招く。ただし、ジョージ・アカロフらの指摘によると、貨幣錯覚は長期的にも解消され難く、この時には長期的にもインフレ率と失業率の間のトレードオフは残る。 貨幣錯覚によって労働者が実質賃金の引き下げよりも名目賃金の引き下げに強く反対している場合、デフレ環境下では実質賃金が高止まりしがちで労働需給が調整されにくくなり、失業を生みやすい。このような状況では、政策によって適度なインフレにすることで、名目賃金を引き上げながら実質賃金を引き下げることができれば、労働需給の調整がスムーズになるため雇用を改善できる。 高インフレ期に株価が低迷するという傾向が確認されるが、これは高インフレに伴う高い名目金利を、投資家が実質金利が高いと誤認するからだという説がある。これも本来は実質金利に基いて判断すべき時に、名目金利に基いて株式の売買行動を決定してしまうという点で貨幣錯覚の一種である。投資家にこのような傾向がある場合、インフレ率を引き上げる金融緩和のような政策は株価高騰を抑える効果(および、それに伴う資産効果)を併せ持つことになるので、マクロ経済の安定化のためにはそれを加味する必要がある。また、低インフレ期に株価バブルが起きやすいことになるため、注意が必要となる[要検証]] – ノート]。 また、土地などの資産への投資が過去の収益の推移に依存して行われる場合、実質での収益が伸びていなくてもインフレーションによって名目での収益が伸びると、投資家はそれをファンダメンタルの高成長と誤認して投資を加速させてしまい、ファンダメンタルと乖離した価格上昇というバブルを招き得る。
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