必須コンポーネントと極小性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/31 17:32 UTC 版)
「マイクロカーネル」の記事における「必須コンポーネントと極小性」の解説
マイクロカーネル上で任意のOSサービス群を構築しなければならない場合、マイクロカーネルはいくつかの中核機能を提供しなければならない。最小でも以下が含まれる。 アドレス空間を扱う何らかの機構 - メモリ保護に必要 CPU割り当てのための何らかの実行抽象化 - スレッドまたは scheduler activations が典型的 プロセス間通信 - 独立したアドレス空間で動作するサーバ群を呼び出すのに必要 このような最小設計は Per Brinch Hansen の Nucleus とIBMのVM(英語版)のハイパーバイザがさきがけである。そして、リートケの「極小原則」として次のように定式化された。 ある概念をマイクロカーネル内で実現することが許されるのは、それをカーネルの外に移した場合、すなわち競合する実装が可能となることでシステム必須の機能が妨げられる場合だけである。 他のあらゆるものはユーザーモードのプログラムとして実装できるが、デバイスドライバをユーザープログラムとして実装する場合、一部のプロセッサアーキテクチャではI/Oハードウェアにアクセスするための特別な特権を必要とする。 極小原則とも関連しマイクロカーネル設計で重要な観点として機構と方針の分離があり、極小のカーネル上に任意のシステムを構築できるようにするのに必要である。方針をカーネル内で実装すると、ユーザーレベルでは上書きできず、マイクロカーネルの可能性が一般に制限される。ユーザーレベルのサーバで実装された方針はサーバを置換することで(あるいは同様のサービスを提供する複数のサーバからアプリケーションが選択することで)変更できる。 効率化のため、ほとんどのマイクロカーネルはスケジューラとタイマー管理を含んでおり、極小原理と機構と方針の分離の原則に反している。 マイクロカーネルを使ったシステムの立ち上げ(ブート)では、カーネル内に含まれないデバイスドライバが必要になる。一般に必要なデバイスドライバをカーネルと共にパッケージ化してブートイメージを作成する必要があり、カーネルはデバイスドライバを配置して起動する手順をサポートしている必要がある。例えばL4ではそのようなブート方式になっている。一部のマイクロカーネルは重要なデバイスドライバを(極小原則に反して)カーネルに含めており、LynxOSや元々のMINIXが挙げられる。ブートを単純化するため、ファイルシステムまでもカーネルに含める場合がある。マルチブート対応のブートローダからブートできるマイクロカーネルのシステムもある。その場合、静的リンクされたサーバ群をロードするか、OSイメージをマウントすることで立ち上げを続行する。 マイクロカーネルにおいては、IPCシステムと仮想記憶管理の設計が重要であり、ページフォールト処理やスワッピングをユーザーモードのサーバで安全に実装できるようにすることが肝要である。全サービスがユーザーモードのプログラムで実行されるので、それらプログラム間の効率的通信手段が必須である。これはモノリシックカーネルに比べて遥かに重要である。効率化するには、IPCシステムのオーバーヘッドを小さくするだけでなく、CPUスケジューリングともうまくやりとりしなければならない。
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