律令法の階級性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 03:45 UTC 版)
律令法は、大化の改新によって支配権を握った畿内および近国の貴族層が、従来のように地方豪族を媒介として全国を支配するのではなく、官僚機構によって人民の末端にいたるまで統治するための法であった。従って貴族制的な身分秩序を法によって確立することが律令法の骨格となっている。 律令法の身分制度は人民を良・賤(せん)に二大別することを特徴とし、両者の中間に大化前代の部民(べのたみ)の後身である品部(しなべ)、雑戸(ざつこ)の身分がおかれた。 賤民の身分は、陵戸、官戸、家人(けにん)、公奴婢(ぬひ)、私奴婢の5階層に区別され、各階層は同一身分内部で婚姻しなければならないという当色婚の制度によって隔離されていた。この複雑な賤民の等級は、唐令の賤民制度の継承であるが、それは中世武家法における賤民制度とちがった律令法の特徴をなしている。 良民は階級的には貴族と平民に二大別されているが、両者の区別は法的には明確ではなかった。ただ五位以上の位をもつものの経済的・政治的特権は法によって保証され、また有位者は一般に課役その他の義務を免除されていた点で、租、庸、調、雑徭(ぞうよう)などの課税および兵役の義務を負っていた一般平民と区別されていた。 律令法は貴族層が、その特権と支配を維持するための法であるから、賤民制度をふくめた全体の身分の体系は、法によって明確に規定しておく必要があった。
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