延喜式の隼人楯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/29 15:20 UTC 版)
三代格式の1つで927年(延長5年)に成立した『延喜式』には、隼人の楯に関する以下の記述がある。 第28巻「兵部省隼人司・威儀条」:「凡威儀所須、横刀一百九十口、楯一百八十枚〔長五尺(150cm)・広一尺八寸(54cm)・厚一寸(3cm)、頭編著馬髪、以赤白土・墨、画鈎形〕、木槍一百八十竿〔長一丈一尺(330cm)〕、胡床一百八十脚、並収司臨時出用。」 第28巻「兵部省隼人司・大儀条」:「凡元日即位及蕃客入朝儀(中略)、〔番上隼人、已上横刀私備〕執楯槍、並坐胡床。」 これにより隼人の楯は、横刀・槍・胡床(床几)と共に180枚(横刀は190口)用意され、元旦や天皇即位の儀礼のほか、蕃客(外国使節団)入朝儀礼などの重要儀礼(大儀)にて使用されたことがわかり、かつこれらの儀礼で隼人が呪術的な役割を担って参加していたことが推定されている。記述に見える楯の寸法は、実際の出土品とほぼ一致しており「鈎形」とは逆S字文様を意味すると考えられる。また、「頭に馬髪を編著」するとは、山形の上辺に並ぶ小穴に馬のたてがみを結いつけて飾ったものと理解される。 飛鳥・奈良時代以前の、古墳時代遺跡出土盾の例では鋸歯文を持つものは多いが、逆S字文様をもつ盾は見られない。この赤白黒で塗られた逆S字紋様は、隼人の呪力を高め、辟邪や破魔の意味を持った文様ではないかと考えられている。井戸から出土した際、楯の表側をすべて井戸枠の外側に向けていた出土状況には、こうした辟邪の呪的効果を期待していたのではないかとする意見もある。
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