小将棋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/30 06:06 UTC 版)
小将棋(しょうしょうぎ)は、日本の将棋類の一つであり、二人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。
現在の本将棋の元となったゲームであるが、これらは時代によってさらに2種類に分けられる。
これらのゲームは「平安将棋 →小将棋(大将棋などの要素を吸収)→本将棋(駒の再利用と醉象の削除)」という順番で発展していったと考えられている。 小将棋が遊ばれなくなった理由として、『諸象戯図式』には2つの複合的な理由が掲載されている。
しかし、これらの理由には確かな信憑性が欠けており、またいつ頃駒の再利用が付け加えられたのかなど、不明な部分が多い。
ルール
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小将棋は文献に記述が残るが、競技が途絶え、詳細なルールは伝わっていない。大まかには、現在よく知られた本将棋に醉象を加え、持ち駒再使用ルールを除いたものと考えられている。
基本ルール
- 縦横9マスずつに区切られた将棋盤の上で行う。
- 自分から見て手前の三段を自陣、反対に相手から見て三段を敵陣という。
- 競技者双方が交互に、盤上にある自分の駒を1回ずつ動かす(本将棋とは違い持ち駒という概念はない)。
- 駒は、玉将(玉)または王将(王)・醉象(象)・飛車(飛)・角行(角)・金将(金)・銀将(銀)・桂馬(桂)・香車(香)・歩兵(歩)の10種類あり、それぞれ動きが決まっている。
- 開始時には、右図のように双方の駒を並べる。
- 玉将または王将、金将以外は以下の方法により「成る」ことができる。
- 敵陣の外側にある駒を敵陣内へ移動させたとき。
- 歩兵、香車の場合は一番奥の段にたどり着いたとき。
- 自分の駒を動かすときに動く先に相手の駒があるとき、その駒を取ることができる。
- 本将棋とは違い、相手の駒を取っても自分の持ち駒にすることはできない。
- 勝敗は以下のように決定される。
駒の動き
- ○はその位置に動ける。
- \│/─はその線上を他の駒に突き当たらない限りどこまでも動ける。
- ☆はその場所まで飛び越えて動ける。
元の駒 | 動き | 成駒 | 動き | ||||||||||||||||||||
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玉将(ぎょくしょう) 王将(おうしょう) |
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全方向に1マス動ける。 取られると負け[注釈 1]。 |
- | - | - | ||||||||||||||||||
醉象(すいぞう) |
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真後ろ以外の方向に1マス動ける。 | 太子(たいし) |
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玉将と同一。 | ||||||||||||||||||
飛車(ひしゃ) |
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縦横に何マスでも動ける。 飛び越えては行けない。 |
龍王(りゅうおう) |
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飛車の動きに斜めに1マスの動きを足したもの。 | ||||||||||||||||||
角行(かくぎょう) |
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斜めに何マスでも動ける。 飛び越えては行けない。 |
龍馬(りゅうめ[注釈 2]) |
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角の動きに縦横に1マスの動きを足したもの。 | ||||||||||||||||||
金将(きんしょう) |
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縦横と斜め前に1マス動ける。 | - | - | - | ||||||||||||||||||
銀将(ぎんしょう) |
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前と斜めに1マス動ける。 | 成銀(なりぎん) |
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金と同じ。 | ||||||||||||||||||
桂馬(けいま) |
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前へ2、横へ1の位置に移動できる。 その際、駒を飛び越えることができる。 |
成桂(なりけい) |
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金と同じ。 | ||||||||||||||||||
香車(きょうしゃ) |
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前方に何マスでも動ける。 飛び越えては行けない。 |
成香(なりきょう) |
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金と同じ。 | ||||||||||||||||||
歩兵(ふひょう) |
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前方に1マス動ける。 | と金(ときん) |
|
金と同じ。 |
上の表では便宜的に成銀を「全」、成桂を「圭」、成香を「杏」と表示している。
朝倉象棋
朝倉象棋(あさくらしょうぎ)は、小将棋を元にした変則将棋(ローカルルール)のひとつである。後述の発掘を契機に朝倉氏の根拠であった福井市で考案され、現在でもイベントとして対局が行われている。
1973年、一乗谷朝倉氏遺跡から発掘された174枚の将棋の駒から醉象が1枚だけ含まれており、当時は醉象を含んだ将棋が指されていたとされている[1]。
このことから、福井県将棋連盟では醉象を用いた本将棋を「朝倉象棋」と命名し、普及活動を行うようになった。駒の初期配置や醉象・太子のルールは小将棋に準ずるが、その他の詳細なルールは本将棋と共通である。取った駒は玉将か醉象(太子)、またはその両方の駒を除き、持ち駒として再利用できることが小将棋との大きな違いとなる。
2007年4月に女流棋士の山田久美対安食総子で対局が行われた[2]。
小象棋(醉象・猛豹のある小将棋)
- 本将棋に醉象1枚(先後手で2枚)のほか猛豹2枚(先後手で4枚)を加えたもの。したがって駒数は計46枚。
- 江戸時代には、駒の配置に2通り(猛豹の位置が「銀将」の上とされる[3]が、「金将」の上という異説あり[4])の図面(及び並べ方を覚える為の詩歌[5])が現存し、持ち駒の再使用の可否が不明[6]。
- 成りは敵陣三段目以内。不成の選択も可だが、「行き処のない歩香桂」の扱いについては記載が無い。
- 「猛豹」の成駒は「角行」、「醉象」が「太子」だが、「金将」は不成か「飛車」[注釈 3]に成るか書かれた文献(及び小象棋「金将」駒の出土・発掘による現物確認)がない。
- 現代では指せる競技者が不在となっている[7]。
脚注
注釈
出典
- ^ 参考資料として、増川宏一『将棋の駒はなぜ40枚か』(集英社、ISBN 4-08-720019-1)の65ページ以降「四二枚型と四〇枚型」をあげておく。醉象以外の中将棋の駒は発掘されておらず、行われていたのが小将棋であったことが強く示唆されている。
- ^ 将棋心地 朝倉象棋
- ^ 山本亨介『将棋庶民史』(朝日新聞社 1972年)
- ^ 西澤太兵衛貞仁『諸象棋図巧(諸象戯図式)』(1696年)元禄六年)
- ^ 「両営玉王之上醉象在。左右金将之首猛豹有。」(伊藤看壽『将棋図式(象戯図式)』(1755年)宝暦五年)
- ^ 木村義徳『持駒使用の謎 日本将棋の起源』(日本将棋連盟 2001年)
- ^ 増川宏一 「ものと人間の文化史 (23‐1) 将棋 (1)」 (法政大学出版局 、1977/11)
関連項目
小将棋(しょうしょうぎ)
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