小児の遠視
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/02/12 07:51 UTC 版)
生まれつき、多くの小児は遠視である事が普通で、特別なことではない。むしろ遠視であることが正常といってもよく、新生児は30cm先がぼんやり見える程度であるが、成長につれて遠視が弱くなり、正視(屈折異常のない状態)になったり、通り越して近視になってしまうことの方が多い。ただ、遠視の程度が問題で、小児の豊富な調節力をもってしても補正できないほどの強度遠視の場合、眼鏡等でこの遠視を補正せず放置すると弱視の原因となる場合がある。弱視になると眼鏡やコンタクトを使用しても視力が上がりにくくなる。これは、はっきりした像を見ないまま成長するので、脳の見る能力が正常に発育しないためである。 両眼で視力が出ていても片眼のみが強度遠視で、視力が出るもう片眼のみで見ている場合がある。このような場合でも小児自身にとっては生まれつきその状態であったので、異常を訴えない場合も多い。 調節力を最大に働かせれば、遠くを明視できる程度の遠視でも、眼は、調節と眼球を内側に回旋させる動き(輻湊)が連動して起こる仕組みになっているため、調節力を働かせると共に両方の目線が内側に寄りすぎ(いわゆる寄り眼の状態)、両眼で同時に同じ物を見ることができない場合がある。この場合も、両眼視機能の発達に影響が出て、距離や奥行きの感覚が鈍くなる。 遠視が問題になるほど強度の小児は、調節力を常に強く使う必要があり、集中して物を見ることが難しい。そのため行動にむらがでて、「落ち着きがない」、「集中力がない」などといわれることがある。 眼の方向がずれ、両眼で物を見ることが難しくなっている場合は、テレビを見るときなどに顔を正面に向けず、無意識のうちに顔を傾けて、横目の状態で見る場合がある。 片眼がよく見えていない場合、無意識のうちにはっきり見えていない方の目を半眼にしたり、閉じてしまって物を見ることがある。 小児の強度遠視は早めに発見して適切な処置をとらないと、視覚の発育は約6歳までにほぼ終わってしまうので、小学校入学前でも、念のため眼科医による検診を早めに受けたほうがよい。
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