学習の初期理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/08 13:37 UTC 版)
19世紀の終わりに、科学者の間では成人の脳にある(約1000億の)脳細胞の数が年齢に従って大きく増えることはないことが一般的に知られており、記憶は新しい神経細胞が生まれることにより生じるわけではないと考えられていた。このことから、新しい神経細胞の形成を仮定することなしに記憶の形成を説明する理論が求められていた。 スペイン人の神経解剖学者のサンティアゴ・ラモン・イ・カハールは、新しい神経細胞の形成を仮定せずに学習のメカニズムを提唱した最初の人物である。1894年のクルーニアン講義において彼は、既に存在する神経細胞間の信号伝達効率が向上することにより、神経細胞の結合が強化されることで記憶が生じると提唱した。ドナルド・ヘッブにより1949年に提唱されたヘッブの法則はカハールのアイディアに応えるものであり、神経細胞は新たな結合の形成や代謝の変化などにより、その信号伝達能力が向上するとした。 これらの記憶形成の理論は現在では確立しているものの、当時は注目されることは少なかった。19世紀後半から20世紀前半の神経科学者と心理学者間で、動物の学習の生物学的基盤を解明するのに必要な電気生理学手法がまだ確立していなかったためである。このような手法は20世紀後半に成立し、ちょうどその時期に長期増強も発見されたのであった。
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