大きいものから小さいものへ: 素材の観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 03:57 UTC 版)
「ナノテクノロジー」の記事における「大きいものから小さいものへ: 素材の観点」の解説
いくつかの物理現象は、対象が小さくなるほどその影響が顕著になる。それは例えば統計力学的効果や量子力学的効果で、「量子サイズ効果」では微粒子の大きさを極小にすることでその電子特性が変化し、電子の閉じこめによるエネルギー準位の離散化があらわれる。この効果はマクロからミクロへと寸法が小さくなることで徐々に働き始めるわけではない。しかし、一般に100ナノメートル未満の距離(いわゆる量子領域)に達すると、量子効果が支配的になる。さらに多くの物理的(力学的、電気的、光学的などの)特性が巨視的な系と比較すると変化する。例えば、表面積が体積に対して増大するため、素材の力学的・熱的・触媒的特性が変化する。ナノスケールでの拡散と反応、高速イオン輸送が可能なナノ構造素材やナノデバイスなどを研究する分野を一般にナノイオニクスと呼ぶ。ナノシステムの機械的性質はナノ工学の研究領域とされる。 素材をナノスケールにまで小さくすると、マクロスケールとは異なる特性を示すようになり、新たな応用が可能になる。例えば、不透明だったものが透明になったり(銅)、不燃性だったものが可燃性になったり(アルミニウム)、不溶性だったものが可溶性になる(金)。例えば金は通常のサイズでは化学的に不活性だが、ナノスケールでは強力な化学触媒として機能する。ナノテクノロジーは、ナノスケールにしたときに物質が示す量子現象や表面現象を利用するために発達したとも言える。
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