多変数関数と多価関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 01:12 UTC 版)
「関数 (数学)」の記事における「多変数関数と多価関数」の解説
複数の変数によって値が決定される関数を多変数関数という。これは複数の数の集合たちの直積集合から数の集合への写像であると解釈される。ベクトル[要曖昧さ回避]の集合を定義域とする独立変数をもつ関数と解釈することもある。n 個の変数で決まる関数であれば、n 変数関数とも呼ばれ y = f ( x 1 , x 2 , … , x n ) {\displaystyle y=f(x_{1},x_{2},\ldots ,x_{n})} のように書かれる。例えば y = x 1 2 + x 2 2 {\displaystyle y=x_{1}^{2}+x_{2}^{2}} は二変数関数である。 一つの入力に複数の出力を返すような対応規則を関数の仲間として捉えるとき多価関数 (multi-valued function) という。常に n 個の出力を得る関数は n 価であるといい、その n を多価関数の価数と呼ぶ。例えば正の実数にその平方根を与える操作は正と負の二つ値を持つので、二価関数である。多価関数に対し、普通の一つの値しか返さない関数は一価関数といわれる。 多変数関数は独立変数がベクトルに値をとるものと解釈できるということを上に述べたが、逆に従属変数がベクトルの値を持つような写像も考えられ、それをベクトル値関数という。ベクトル値関数が与えられたとき、像のベクトルに対してその各成分をとり出す写像を合成することにより、通常の一価関数が複数得られる。つまり、定義域を共有するいくつかの関数を一つのベクトルとしてまとめて扱ったものがベクトル値関数であるということができる。 一つの例として、実数体 R {\displaystyle \mathbb {R} } で定義された二価の関数 f ( x ) := ± 1 + x 2 {\displaystyle f(x):=\pm {\sqrt {1+x^{2}}}} はベクトル値関数 f : R → R 2 ; x → f ( x ) = ( 1 + x 2 , − 1 + x 2 ) {\displaystyle f\colon \mathbb {R} \to \mathbb {R} ^{2};\ x\to f(x)=({\sqrt {1+x^{2}}},-{\sqrt {1+x^{2}}})} として扱うことができる。また、定義域の "コピー" を作って定義域を広げてやることで、その拡張された定義域上の一価の関数 f : A ⊔ B → R ( A = B = R ) {\displaystyle f\colon A\sqcup B\to \mathbb {R} \quad (A=B=\mathbb {R} )} f ( x ) = { − 1 + x 2 ( x ∈ A ) , 1 + x 2 ( x ∈ B ) {\displaystyle f(x)={\begin{cases}-{\sqrt {1+x^{2}}}&(x\in A),\\{\sqrt {1+x^{2}}}&(x\in B)\end{cases}}} と見なすこともある。複素変数の対数関数 log は素朴には無限多価関数であるが、これを log のリーマン面上の一価関数と見なすなど、定義域を広げて一価にする手法は解析的な関数に対してしばしば用いられる。
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