夏来る人格二つたずさえて
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評 言 |
恩田皓充に最初に会ったのは四年前、まだ彼が高校三年の時である。 毎年八月に実施している「俳句指導者講座」で、子供たちの句会の核として参加をお願いするためだった。石神井公園を句の話しをしながら散策した。口数は少なかったが、一つ一つの言葉に若々しい感性を感じさせたのを記憶している。 皓充が初めて句を詠んだのは五歳の時だ。 南天をとろうと思えば落ちにけり まだ字も書けない頃だから、この句は口に出して詠んだものだ。俳人である母親の恩田侑布子さんが書きとめておかれた句だ。母はさらに二歳の頃に口ずさんだ言葉をも書きとめてあるという。 ボールのいのちはまあるいいのち ボールのいのちはまあるいいのちだよ 皓充は四歳の時から童話を書き始めた。静岡の豊かな自然に恵まれた環境の中で彼はまた次々に自由奔放に俳句も作り続けた。そして中学二年生になった時、河出書房新社から『青空の指きり』という句集を出版した。 笹舟にありを乗せれば春匂う あぶらぜみ空をいためて食べている 青空へ糸の切れたる曼珠沙華 冬の空雲の兵隊つれていく 歌人の俵万智は皓充の句についてこんな言葉を残している。 「日本語には、まだまだこんなにも新鮮で素敵な組み合わせがあるのか」「私は言葉を浴びることの幸せを、たっぷりと味わった」と。 『青空の指きり』に納められている多くは、小学生の句だ。彼はその後書きの中で「中学生になって、自然と触れ合う時間が圧倒的に少なくなってしまった」と書いている。今、大学三年生になった皓充は時間がとれると静岡に帰る。そこでまた自然にたっぷりつかって若いエネルギーを充電しているに違いない。そこにはまた母親の俳人恩田佑布子さんの厳しくやさしい眼差しも・・。 揚句は、今年の「俳句指導者講座」の句会で高点句。これからの皓充は天真爛漫な少年の感覚と鋭敏な感性や知性をさらに磨いて、俳句界の一翼を担ってほしいと願っている。 |
評 者 |
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備 考 |
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