夏の組香
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 00:11 UTC 版)
菖蒲香(あやめこう)は、夏に行われる組香の一つである。 証歌は「五月雨に池のまこもの水ましていつれあやめと引きそわつらふ」である。『源平盛衰記』陀巻第十六に取材している。その内容は、以下の通りである。 鳥羽院の女房に菖蒲前という美人がおり、頼政は一目惚れをしてしまう。頼政は菖蒲前に手紙をしばしば送るが、返事はもらえなかった。そうこうしているうちに3年が経過し、このことが鳥羽院に知られてしまう。鳥羽院は菖蒲前に事情を聞くが、顔を赤らめるだけではっきりとした返事は得られない。そこで、頼政を召し、菖蒲前が大変美しいというだけで慕っているのではないか、本当に思いを寄せているのかを試したいと発願する。 そこで、菖蒲前と年恰好、容貌がよく似ている女二人に同じ着物を着せ、頼政に菖蒲前を見分けて二人で退出するように申し付けた。頼政は、どうして院の御寵愛の女を申し出ることができようか、ちょっと顔を見ただけなのに見分ける自信がない。もし間違えれば、おかしなことになり、当座の恥どころか末代まで笑いものになってしまうと困って躊躇していると、院から再び仰せがあったので、「五月雨に沼の石垣水こえて何かあやめ引きぞわづらふ」という歌を院に奉る。 院はこれに感心し、菖蒲前を頼政に引き渡す。 手順は以下の通り。 5種の香を用意する。 「四」を焚き出し、香りを覚える。「四」だけに試みがある理由は頼政がよそながら菖蒲を見たことがあるからである。 一から五を全て打ち交ぜ、焚き出す。「四」のみを探すため、自分が一、二、三、五であると思った香は聞き捨てる。一、二、三、五は、菖蒲前とともに頼政の前に並んだ女房たちをあらわしている。 客は記紙に、聞き捨てた順に一、二、三、五とかくが、聞き当てる四の香を出たところに織り込み、右肩に「アヤメ」と記し、菖蒲の存在を明示する。
※この「夏の組香」の解説は、「香道」の解説の一部です。
「夏の組香」を含む「香道」の記事については、「香道」の概要を参照ください。
- 夏の組香のページへのリンク