呼称に対する誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 04:47 UTC 版)
「ステーションワゴン」の記事における「呼称に対する誤解」の解説
ステーションワゴンは、「station(駅)のwagon(馬車)」で「駅馬車」と訳され、アメリカ開拓期に人と荷物を乗せて都市間を移動した駅馬車がその語源として紹介されることがある。後者の駅馬車は映画のタイトルとしても知られるが、この原題は『Stagecoach』(ステージコーチ)である。ステージコーチとは馬車を使った交通機関のことであり、この「ステージ」とは馬車に乗っている乗客を乗り降りさせる駅を指す。現代でいえば長距離バス及びその停留所に相当する。これは19世紀より前から広く各国各地域で使われていた交通機関網である。 また17世紀頃の英国の公共交通用途の馬車には大別してハックニーキャリッジという市街地で使用される軽量なものと、ハックニーコーチという大きめで頑丈な、町と町を結ぶ都市間交通用途の乗合馬車があった。前者は都市部でのいわばタクシーで、日本語では辻馬車と呼ばれるものである(ハックニーキャリッジは現在、英国タクシーの正式名称でもある)。後者のハックニーコーチは、その後ステージコーチと呼ばれる様になった。これも現在日本語で『駅馬車』と呼ばれるものである。 一方同時期のステーションワゴンは、「駅からの人や荷物をその周辺地区に配送する役割」のもので、駅とその周辺を往復するタクシーであり荷物の配送車でもある。日本語では人の運搬(タクシー)では「辻馬車」と表現するが、荷物を運ぶのであれば辻馬車ではなく、そのものを正確に表す日本語はない。つまりステーションワゴンは「鉄道の駅周辺で利用されるワゴン」であり、「ワゴン=馬車」と訳されるのが一般的なので、これを「駅馬車」と紹介することも可能であるが、すでに日本語で別の意味で「駅馬車」という言葉があるため混乱が生じている。 英語であればステーションワゴンとステージコーチはまったく別の表現であるが、「駅馬車」という同一の日本語表現として紹介されるために生じる勘違いである。つまり現代のワゴンとは「(積載物問わず)馬が引く車」という意味ではなく、古くから現在まで続く「(乗り心地ではなく積載量を重視した)荷物を主に運ぶ用途の車両」の意味である。
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