司法制度改革と成仏理論
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「成仏」と題した高橋の論考が2006年4月号『法学教室』(有斐閣から出版されている法律専門誌) の巻頭言を飾ると、その内容は「成仏理論」と後に通称され、司法関係者や広く士業・専門職の間で知られるようになった。 「法律家が増え続けることになっているが、新人法律家の未来はどうなるであろうか」「人々の役に立つ仕事をしていれば、法律家も飢え死にすることはないであろう。飢え死にさえしなければ、人間、まずはそれでよいのではないか。その上に人々から感謝されることがあるのであれば、人間、喜んで成仏できるというものであろう」 — 高橋 (著)「成仏」(有斐閣『法学教室』2006年4月号 巻頭言) より抜粋 この発言の背景には、遡ること7年前の1999年より検討開始となった司法制度改革がある。当改革の一環で、日本にも法科大学院 (ロースクール) が2004年より制度運用開始され、法曹人口 (特に弁護士人口) の増加が見込まれたことから、新人法律家の一定数は食うに困る者も出るであろうとの悲観的な見通しがあった。このような情勢を踏まえて高橋は、金銭面を超えて法律家を目指す大義を問う論考を投じたのであった。 しかし、成仏理論は主に2つの観点から批判を受けた。第一に、司法制度改革によって弁護士有資格者は増加したものの、弁護士業の市場のパイがそれに比例して拡大しなかったことから、上述の悲観論が現実となった。また第二に、高橋本人は論考を発表した2006年当時、東京大学の教授職という安定した地位にあったことから、食うに困る当事者の心情への配慮に欠くとの意見である。なお、成仏理論発表の5年前には、同じく『法学教室』誌面上で「私はお金が大好きである」との高橋の発言も見られる。
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