参考:経済産業省による論点整理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/10/11 02:38 UTC 版)
「日本版ESOP」の記事における「参考:経済産業省による論点整理」の解説
米国型ESOPと同様の効果を期待する退職給付型のスキームと、後述される従業員持株会活用スキームの両方を、同時に取り上げて論点整理を行ったものが、日本における新たな自社株式保有スキーム検討会報告書『新たな自社株式保有スキーム(いわゆる日本版ESOP(イソップ))に関する報告書』である。 このとりまとめにおいては、退職給付型のスキームについての論点であるのか、従業員持株会活用スキームについての論点であるのか、明確な区別がされておらず、両者が同種のスキームであるかのような記述がなされていることから、従業員持株会活用スキームについての論点があたかも日本版ESOP全般についてのものであるかのような利用者の誤解を生む原因となっている。特に、「会社による株式給付」と「会社による株式売却」の相違を無視していることが、このとりまとめの最大の問題点であるといえる。 また、このとりまとめでは、会計処理において自己株式とされるかどうかが重要であると謳われているが、会計処理上自己株式とされる事例が大半となるに及んで以降は、経済的に自己株式であって会計処理上も自己株式とされる場合であっても、会社法上は自己株式にあたらないとされる場合があるなどと主張する金融業者や弁護士がでてくるなど、このとりまとめのこの部分の指摘は、事実上無視される結果となっている。 なお、従業員持株会活用型スキームにおいて、会社は株価が上昇すれば追加費用の負担は免れるが、信託の残余財産は従業員持株会の会員等に分配されてしまうため、財務的なメリットは生じない。逆に、株価が下落した場合には、スキームが早期に終了するうえ、借入金返済のための補償債務が発生し、偶発的な損失を蒙ることになる。この損失は、貸付をした金融機関に支払われ、従業員に対する補填ではないにもかかわらず、福利厚生費として費用処理できる場合があるものとされている。 実務上は、自己株式認識についての司法判断が示されない限り(すなわち訴訟が提起され、個別判決が為されない限り)、スキームがどのような場合に合法か否かについて明確にされることはない。 このような取りまとめがおこなわれた遠因としては、ESOPを会社による自社株式投資ビークルの設立を目的とする金融スキームとして取り上げるという根本的な誤りを犯していること、むしろ、経済産業省の認識が、持ち合い解消の受け皿或いは買収防衛策として、会社に都合のよい株式プールを作りたいという経営者の要望に対して便宜を図ることを目的としているためではないかと思われる。
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