半群の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/02 17:25 UTC 版)
詳細は「正則半群」を参照 上述のマグマに対する定義は群における「単位元に対する逆元」の概念を一般化するものであった。それよりは少し判りづらいが、演算の結合性は仮定する(半群において考える)けれども、「単位元の存在を仮定しない」という形で逆元の概念を一般化するということも可能であり、ここではそのような定義を与える。 半群 S の元 x が(フォン・ノイマン)正則元 ([von Neumann] regular) であるとは、S の元 z で xzx = x を満たすものが存在することを言う。このときしばしば z は x の擬逆元 pseudo-inverse) と呼ばれる。S の元 y が xyx = x かつ y = yxy を満たすとき、y は単に x の逆元 (inverse) であるといわれる。x = xzx が成り立つとき、 y = zxz が x のここでいう意味での逆元となることは直ちに確かめられるから、したがって任意の正則元は少なくともひとつの逆元を持つ。もうひとつすぐに確かめられることは、y が x の逆元ならば e = xy および f = yx は冪等元、つまり ee = e およびff = f が成立すること、したがって互いに他の逆である元の対 (x, y) からふたつの冪等元が得られ、ex = xf = x, ye = fy = y が成立して、 e は左単位元として、一方 f は右単位元として x に作用すること、および左右を入れ替えて y についても同様のことが成り立つということである。このような簡単な視座はグリーンの関係式(英語版)によって一般化され、勝手な半群の任意の冪等元 e は Re における左単位元、および Le における右単位元となる。もうすこし直観的にいえば、この事実は互いに逆である任意の対から局所左単位元および局所右単位元が導かれるということである。 単位的半群において、前節で定義した意味での逆元の概念は本節におけるそれよりも真に狭い意味のものになっている。H1 の元は前節の単位的マグマの意味での逆元を持つのみであるが、その一方で任意の冪等元 e に対する He の元は本節における意味での逆元を持つ。この広い意味での逆元の定義では、かってな半群や単位的半群において逆元が一意である必要はない(し、存在するとも限らない)。任意の元が正則元であるような半群あるいは単位的半群は正則半群と呼ばれ、任意の元が少なくとも一つの逆元を持つ。また、任意の元が本節に言う意味での逆元をちょうどひとつだけ持つような半群は逆半群という。そして、ただひとつの冪等元を持つ逆半群は群である。逆半群は吸収元 0 を持つことがあるが、(もしあれば 000 = 0 を満たすから)群ではそのような元は存在しない。 半群論以外の文脈では、本節にいう意味の逆元がただひとつ存在するとき、それを擬似逆元あるいは準逆元 (quasi-inverse) と呼ぶことがある。このことは(本項で扱う例などのような)多くの応用において、結合性が満足され、この概念を単位元に関する(左、右)逆元の一般化と見ることができることから正当化される。
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