力点と作用点という名前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 05:51 UTC 版)
小学校では支点・力点・作用点の3点セットで教わるが、大学の力学では力点は物理用語としては普通登場しない。 力学では「力」はテンソルとして扱われる。大抵の場合、単純化のため「1階のテンソル」(ベクトル[要曖昧さ回避])として扱われ、大きさ・向き・始点を持つ(中学校以上ではこちらの概念で学ぶ)。これを力の三要素と呼び、特にベクトルの始点を作用点(または着力点)と呼ぶ。このため力学で'てこ'を扱う際は、人がてこに加える力と、重りがてこに加える力のそれぞれの作用点があるだけである。例えば英語では、力の作用点を point of application と呼ぶが、てこを説明する際は「人が加える力」の作用点を point of effort、「重りが加える力」の作用点をpoint of load と呼ぶ。この2点を小学校では力点・作用点と呼んでおり、物理学を学んだ者は混乱しないように注意が必要である。 なぜ2つの力のベクトルの始点を異なる名前で呼ぶ必要があるかといえば、てこの分類に必要であるからである。もし力点・作用点を区別しなければ、「てこの種類」で述べる第2種てこ・第3種てこを分類できない。このような分類をする理由は、てこが「力を増幅させ、あるいは力の向きを変更させる」最も基礎的な装置として古代に開発された道具(単純機械)であり、力を伝達する装置であるからである。力の伝達装置の入力・出力を区別するため、力点・作用点という異なる名前が必要だったのである。 なお、天秤においては力点・作用点を区別できない。これは、てことは道具の目的が異なるからである。ある小学校の指導案では、「てんびん」を学習させた後、てんびんの片方のおもりをはずして手で押し、重いおもりを小さい力で持ち上げられるという「てこの原理」を体感させることで「てこ」を学習させる。ここで自分の手があるほうが力点となり、同時に天秤は重い物を持ち上げる道具になっている。 ちなみに支点は力学でも重要であり、英語では Fulcrumという固有の単語がある。
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