剰余価値生産の二つの方法 絶対的剰余価値生産と相対的剰余価値生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:55 UTC 版)
「資本論」の記事における「剰余価値生産の二つの方法 絶対的剰余価値生産と相対的剰余価値生産」の解説
資本が取得する剰余価値を増加させるには二つの方法がある。第一に、労働力の価値(またはその価格表現である賃金)が一定であるなら、労働時間を延長させることである。日当1万円の労働者が8時間労働で2万円分の価値を生み出すとき、12時間労働に延長すれば3万円分の価値を生み出し、剰余価値は1万円分増加する。これを絶対的剰余価値生産という。ただし、この方法には限界がある。まず1日は24時間しかない。さらに賃金労働者は労働時間の短縮を求めて労働組合を組織して資本家に抵抗する。 そこで、とられる第二の方法は、労働時間が一定ならば労働力の価値または賃金を減らすことである。先ほどの労働者の日払い賃金を1万円から5千円に半減させれば、剰余価値は2万円から2万5千円に増大する。これを相対的剰余価値生産という。しかし、無前提に労働力の価値を減らすことはできない。労働力の価値または賃金は、労働力商品の再生産費、つまり労働者とその家族の生活費によって決まっている。資本の側から一方的に賃金を減らすことは、労働者を生活不能にし、労働力商品の再生産を不可能にさせる。賃金労働者なくして資本は剰余価値生産できないから、短期的にはともかく長期的にはこのようなことは不可能である。ではどうするか。それは生産力の上昇によって可能となる。生産力を上昇させ、労働者の生活手段を構成する商品の価値が安くなれば、労働者の生活費も安くなり、労働力商品の価値が低下し、賃金を引き下げても労働力の再生産が可能となる。賃金を半減させるためには、生産力が二倍となればよいのである。個々の資本はより安価な商品を目指して生産力を上昇させるために、相互に競争している。この競争が諸資本を強制し、個々の商品を安くさせ、生活費を安くさせ、賃金を引き下げる前提を生み出している。 生産力を上昇させる手段には、協業、分業に基づく協業、児童労働機械制大工業があり、マルクスはそれぞれについて分析している。 日本資本主義における正社員の長時間過密労働は絶対的剰余価値生産の概念によって、非正社員の低賃金は相対的剰余価値生産の概念によって、よく説明することができる。
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