剰余スペクトル、連続スペクトル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 00:55 UTC 版)
「量子力学の数学的定式化」の記事における「剰余スペクトル、連続スペクトル」の解説
スペクトルσ(A)に属するλのうち、A-λIが単射でないもの全体が点スペクトルσP(A)であった。それ以外のσ(A)の元、すなわちA-λIが単射ではあるが全射でないものは2つのタイプに分類できる。 定義 ― A-λIが単射であるが全射でなく、しかもその像 ( A − λ I ) ( D o m ( A ) ) {\displaystyle (A-\lambda I)(\mathrm {Dom} (A))} が値域 H {\displaystyle {\mathcal {H}}} で稠密になるλ全体の集合をσc(A)と書き、Aの連続スペクトルという。一方A-λIが単射であるが全射でなく、しかも ( A − λ I ) ( D o m ( A ) ) {\displaystyle (A-\lambda I)(\mathrm {Dom} (A))} が H {\displaystyle {\mathcal {H}}} で稠密ではないもの全体の集合をσr(A)と書き、Aの剰余スペクトルというS12(p12)。 λがAの剰余スペクトルもしくは連続スペクトルに属していれば、A-λIは単射であるので、A-λIの像 ( A − λ I ) ( D o m ( A ) ) {\displaystyle (A-\lambda I)(\mathrm {Dom} (A))} の上定義された逆写像 ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} を定義できる。この意味において、レゾルベント集合においてもA-λIの逆写像が定義できるので、この意味で剰余スペクトルや連続スペクトルはレゾルベント集合に類似しているが、違いは逆写像の定義域にある。レゾルベント集合においては ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} は H {\displaystyle {\mathcal {H}}} の全域で定義され、しかも(Aが閉作用素であれば) ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} は必ず有界である。それに対し連続スペクトルの場合は ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} の H {\displaystyle {\mathcal {H}}} の稠密部分空間で定義されているに過ぎず、しかも ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} は有界ではない新井(p125)。さらに剰余スペクトルにおいては ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} の定義域は H {\displaystyle {\mathcal {H}}} で稠密ですらない。 以上で定義した概念をまとめると次のようになる。 定理 ― 複素数の集合Cはレゾルベント集合ρ(A)とスペクトルσ(A)により、 C = ρ ( A ) ⊔ σ ( A ) {\displaystyle \mathbf {C} =\rho (A)\sqcup \sigma (A)} と互いに交わらない和として書き表す事ができ、さらにスペクトルσ(A)は点スペクトルσP(A)と連続スペクトルσc(A)と剰余スペクトルσr(A)により、 σ ( A ) = σ P ( A ) ⊔ σ c ( A ) ⊔ σ r ( A ) {\displaystyle \sigma (A)=\sigma _{P}(A)\sqcup \sigma _{c}(A)\sqcup \sigma _{r}(A)} と互いに交わらない和として書き表せる。 なお連続スペクトルは本稿で述べたのとは別の定義があり、その定義を採用した場合には連続スペクトルと剰余スペクトルは排他的になるとは限らないK12(p30)。 点スペクトルσP(A)以外ではA-λIが単射になるので、A-λIの像の上で逆写像 ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} が定義できるが、剰余スペクトルでは ( A − λ I ) − 1 {\displaystyle (A-\lambda I)^{-1}} の定義域は有界ではなく、連続スペクトルでは稠密に定義されているが有界ではなく、レゾルベント集合では全域で定義されていてしかも有界である。
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