冠動脈の解剖と撮影
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 03:06 UTC 版)
「心臓カテーテル検査」の記事における「冠動脈の解剖と撮影」の解説
冠動脈は右冠動脈と左冠動脈に分かれる。左冠動脈は左主幹部より左前下行枝と左回旋枝に分かれる。冠動脈の枝の命名法はAHA分類とCASS分類が知られている。CASS分類のほうが個人差による変化に対応できる命名法だが、簡単のためAHA分類で示す。AHA分類では冠動脈は1~15までの枝で記載される。右冠動脈が1~4であり、左冠動脈本幹が5、左前下行枝は6~10、左回旋枝が11~15である。1は右冠動脈近位部、2は右冠動脈中間部、3は右冠動脈遠位部、4PDは右冠動脈後下行枝、4AVは右冠動脈後側壁枝、右室枝がRV、鋭縁枝がAMである。5は既に述べたように左冠動脈主幹部、6は左前下行枝近位部、7は左前下行枝中間部、8は左前下行枝遠位部、9は第1対角枝、10は第2対角枝、SPは中隔枝である。11は左回旋枝近位部、13は左回旋枝遠位部、12鈍縁枝、14は後側壁枝、15は後下行枝である。虚血性心疾患の場合は壊死心筋との対応が重要となってくる。前壁中隔は主に左前下行枝(V1~V4)、広域前壁も左前下行枝(I,aVL,V1~V6)、側壁は左前下行枝か左回旋枝(I,aVL,V5,V6)、高位側壁も左前下行枝か回旋枝(I,aVL)、下壁は右冠動脈(II,III,aVF)、純後壁は右冠動脈か左回旋枝(V1,V2のpoor R)に対応するといわれている。なお、()は心電図で異常Q波、ST変化が出現する部位である。 これら各種血管を描出するために冠動脈造影(CAG)では様々な条件で撮影される。RAOは右前斜位、LAOは左前斜位、CRは頭側、CAは尾側であるこれらの記号を用いて撮影条件を記述する。なお通常は透視下で行うため、撮影条件は例に過ぎない。 RAO-CAは主に回旋枝を描出する撮影法である。鈍縁枝や後側壁枝まで描出できるが左前下行枝は描出しにくい。RAO-CRは主に左前下行枝を描出できる。対角枝、中隔枝まで描出できるが左回旋枝は描出できない。LAO-CAはスパイダービューといわれ左冠動脈主幹部がよく描出される。LAO-CRは左前下行枝の遠位部がよく描出される。右冠動脈でもRAO、LAOともに用いる。 これらの撮影を駆使して検出できる病変は以下に述べるようなものである。 狭窄 狭窄の程度(75%以上の狭窄が有意、左冠動脈本幹のみ50%以上で有意)、狭窄の長さ、場所、局所やびまん性といった範囲、中心性、偏心性といった形態の評価が行える。 拡張 動脈硬化では狭窄以外に拡張がみられることがある。局所的な拡大の場合は冠動脈瘤という。 冠動脈解離 血栓 冠痙縮 石灰化
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