偽造・文書とは? わかりやすく解説

偽造文書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/03 08:35 UTC 版)

偽造文書(ぎぞうぶんしょ)とは、作成者と主張される者が実際には作成していない文書をいう。対立概念は、「作成者と主張される者が実際に作成した文書」であり、真正文書(しんせいぶんしょ)という。史学においては、偽書という用語も用いられる。

文書の存在意義は、「誰が何を考えていたのか、他人にも分かるように記録する」ことにあるから、その記録内容が誰の思考なのかを確定できなければ、その文書の存在意義は著しく減少する。そのため、史学や、訴訟等の法的手続では、文書が真正文書か偽造文書かは重要な問題となる。

「作成者と主張される者」は、文書自身に表示されている場合(顕名文書)もあれば、文書自身には表示されていない場合(匿名文書)もある。「作成者と主張される者」が、関係者ごとに異なる場合があるし、顕名文書か匿名文書かも、関係者ごとに異なる場合がある。

「作成者と主張される者」が関係者ごとに異なるのは、次のような場合である。例えば、「借用証」と題する文書に「借主 甲野太郎」との署名があったとする。そして、この文書の所持者である乙野花子が原告となり、甲野太郎を被告として貸金の返還を請求する訴訟を提起したとしよう。そして、花子が借用証の記載どおりの貸金があるから太郎には返済義務があると主張したのに対して、太郎は「借用証」に署名をしたことも見たこともないと主張したとしよう。この場合、花子の主張によれば、「借用証」は太郎が実際に作成した真正文書であるが、太郎の主張によれば、「借用証」は太郎が実際には作成していない偽造文書ということになる。

顕名文書か匿名文書かが関係者ごとに異なるのは、次のような場合である。例えば、『家畜人ヤプー』と題する書籍では、「沼正三」が著者を自称しているが、「沼正三」を実在の人物と理解する者にとっては「家畜人ヤプー」は顕名文書であり、「沼正三」を身元不明者の変名と理解する者にとっては「家畜人ヤプー」は匿名文書である。もっとも、「沼正三」が何者の変名かを知っている者にとっては「家畜人ヤプー」は顕名文書といえる。

近代的訴訟制度が施行されている法域では、偽造の疑いのある文書は証拠能力を認められないのが原則である(日本民事訴訟法228条1項、韓国民事訴訟法328条、ドイツ民事訴訟法439条1項、合衆国連邦証拠規則9条規則901(b)(8)(A)など)。その意味するところは、裁判官は、出処の明らかでない文書に基づいて事実を認定してはならない、ということである。したがって、匿名文書は、訴訟において証拠としての意味を持たない。このことが、対外的に用いられる文書には署名や押印が要求されるという慣習の背景にある。

代書や口述筆記の作成者は、代書や筆記をさせた者か、代書や筆記をした者かという問題は、法学、とりわけ日本やドイツの刑法学における基本的論争の一つである。「させた者が作成者である」という説を観念説、「した者が作成者である」という説を事実説というが、観念説が通説とされている[1]。日本やドイツの法制度では、作成名義を偽る行為(有形偽造)が処罰対象であり、作成名義を偽ってはいないが内容虚偽の文書を作成する行為(無形偽造)は原則として処罰されないことから、このような議論が必要とされる。

どのような偽造文書をどの程度の厳しさをもって取り締まるかは、国、地域や時代ごとに様々であるが、権力者の名義を冒用(ぼうよう。勝手に用いること)行為や通貨もしくはその類似物を偽造する行為を厳しく処罰するのは、どこでもいつでも共通の傾向である。

脚注

  1. ^ 松宮孝明「文書偽造罪における作成者と名義人について」立命館法学264号 (1999) 1頁

偽造文書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 15:11 UTC 版)

一次資料」の記事における「偽造文書」の解説

歴史学者時折一次資料称する偽造され文書対処しなければならないこうした偽造品通常法的権利主張したり、家系でっちあげたり、歴史的な事件に関して特定の解釈広めるためといった、不正な目的作られる文書精査してその真正性確かめることを文書形式学という。 何世紀にもわたり、代々教皇はその宗教的権威裏付けるものとして、偽造文書であるコンスタンティヌスの寄進状使っていた。最古の偽造文書の例としてアングロ・サクソンチャーター英語版)があり、これは11世紀もしくは12世紀から僧院修道院土地権利主張する裏付けとして多数偽造したもので、本来の文書失われ現存しない。一次資料偽造品として特記すべきものの一つとして教区教会真鍮記念碑偽造し設置したエドワード・ディアリング卿(英語版)がある。1986年ヒュー・トレヴァー=ローパーヒトラーの日記本物認定したが、それは後に偽物判明した近年では、イギリス国立公文書館が偽造文書を保管し、その出所判明備えている。しかし近現代を扱う歴史学者何らかの重要性伴なう偽造文書に出会うことは滅多に無い:2225

※この「偽造文書」の解説は、「一次資料」の解説の一部です。
「偽造文書」を含む「一次資料」の記事については、「一次資料」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「偽造・文書」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「偽造文書」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「偽造・文書」の関連用語

偽造・文書のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



偽造・文書のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの偽造文書 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの一次資料 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS