偶奇性の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 07:26 UTC 版)
「2の倍数であるような整数」を意味する「偶数」のような、数学の用語に対する正確な定義は、究極的には一つの風習である。「偶数」とは違い、ある数学的概念は、自明な例や退化した例を排除するための目的を持って構成された。素数は有名な例である。20世紀以前に素数の定義は一貫性がなく、ゴールドバッハ、ランベルト、ルジャンドル、ケイリー、クロネッカーのような有名な数学者が「1は素数である」と書いていた。現代の「素数」の定義は「厳密に2つの異なる約数(1とその数自身)を持つ正の整数」である。この定義によれば1は素数ではない。この定義は、素数に関する数学的定理に対して、(1を素数に含める場合と比較して)より自然に適合することがわかる。それによりこの定義を合理化できる。例えば算術の基本定理は、1を素数として考慮しない場合の方が主張としてより簡単になる。 同様に、ゼロを含まないような方法で「偶数」の概念を再定義することは可能である。しかしそのような新しい定義は、偶数に関する定理を記述するためにより困難を伴うであろう。その効果は、以下のように基本的な算術にも見ることができる。偶奇性が和、差、積にもっとも関連する規則は、 偶数 ± 偶数 = 偶数 奇数 ± 奇数 = 偶数 偶数 × 整数 = 偶数 これらの規則で左辺に適当な値を代入すると、右辺にはゼロが表れる。 2 − 2 = 0 −3 + 3 = 0 4 × 0 = 0 ゆえに上の規則は、もしゼロが偶数でないとすれば正しくない。その場合、少なくともこれらの規則は多少修正されなければならない。例えば、ある受験参考書は、偶数は2の倍数である整数として特徴づけているが、0は「偶数でも奇数でもない」と断言している。したがってその参考書では、偶数と奇数に関する計算規則は、次のように例外を含んだものになっている: 偶数 ± 偶数 = 偶数 (またはゼロ) 奇数 ± 奇数 = 偶数 (またはゼロ) 偶数 × ゼロでない整数 = 偶数 偶数の定義においてゼロに対して例外的な扱いをすると、偶数に対する規則においても同じような例外的扱いを強いられることになる。他の観点から言うと、正の偶数が従うべき規則を置き、さらにその規則が整数に対しても連続的に保たれることを要求すると、結局は通常の偶数の定義とゼロの偶数性が強いられることになる。
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