低温焼戻し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 21:32 UTC 版)
比較的低温域で焼戻しすることで、焼入れ後の硬さをあまり減少させず、残留応力の低減と性状の安定化を行うことができる。このような焼戻し処理を低温焼戻しと呼ぶ。焼戻し温度は目安として150 - 250℃の範囲である。低温焼戻しによって生じる鋼組織は、上記で説明した低炭素マルテンサイトで、ビッカース硬さは約800HVとなっている。 硬さや耐摩耗性を必要とする材料に低温焼戻しが適用される。鋼種としては、炭素含有量が0.77%超える過共析鋼が主となっている。工具鋼の例としては、二次硬化特性を持たない炭素工具鋼や冷間加工用の合金工具鋼などに適用される。実際の製品としては、ナイフや包丁といった切削工具、ゲージやノギスといった計測器具、自動車車体のプレス金型、軸受などで適用される。また、低温焼戻しは高周波焼入れ後や浸炭焼入れ後の標準的な焼戻しでもある。 加熱装置には油浴が最適とされる。100℃に沸騰させたお湯に漬す焼戻しでも残留応力を25%程度減少でき、耐摩耗性向上の効果があるので、本来の低温焼戻し温度が不可能な場合などに推奨される。高温焼戻しの場合は焼戻し脆性を避けるために水冷などを用いた急冷が推奨されるが、焼戻し脆性温度を避けている低温焼戻しの場合は空冷などのややゆっくりした冷却が推奨される。これは、ひずみや割れを防ぐためである。
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