位置選択性と立体選択性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 00:38 UTC 版)
「オキシ水銀化」の記事における「位置選択性と立体選択性」の解説
オキシ水銀化は非常に位置選択的であり、教科書的なマルコフニコフ反応である。極端な場合を除けば、求核剤の水は常により置換基の多い炭素原子を優先的に攻撃し、ヒドロキシ基を付加する。この現象は第1段階の最後に形成されるマーキュロニウムイオンの2つの共鳴構造を調べることによって説明される。 これらの構造を詳細に調べると、水銀原子の正電荷は時折(約4%の時間)より置換基の多い炭素原子上に存在する。これが非常に反応性の高い求電子剤である一時的な三級カルボカチオンを形成する。求核剤はこの時にマーキュロニウムイオンを攻撃する。したがって、求核剤はより置換基の多い炭素原子を攻撃する。 立体化学的には、オキシ水銀化はアンチ付加である。第2段階で説明されたように、求核剤は立体障害のため水銀イオンを同一面から炭素原子を攻撃できない。 置換シクロヘキセンを用いたオキシ水銀化反応の位置選択性と立体特異性の例を以下に示す。tert-ブチルのような嵩高い基は、環をいす形に固定し、環の反転を防ぐ。4-tert-ブチルシクロヘキセンの場合、オキシ水銀化によって2つの生成物が得られるが、二重結合の両端への付加は常にアンチであり、tert-ブチル基に対してトランスのアセトキシ水銀基がわずかに優先され、結果的にシス生成物がわずかに多くなる。1-メチル-4-tert-ブチルシクロヘキセンでは、オキシ水銀化によって1つの生成物しか得られず、やはり二重結合の両端へのアンチ付加となり、水はより置換された炭素のみを攻撃する。二重結合へのアンチ付加の理由は、水の孤立電子対と、アセトキシ水銀基の反対側にあるマーキュロニウムイオンの空軌道との軌道の重なりを最大化するためである。位置選択性は、水がより置換度の高い炭素を攻撃する方に有利であることが観察されたが、水は二重結合へシン付加しないため、遷移状態は水がアセトキシ水銀基の反対側から攻撃する方に有利であることが示唆された。
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