仮想関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 05:46 UTC 版)
クラスのメンバー関数をvirtualキーワードで修飾することにより、派生クラスでオーバーライド(再定義)することが可能な仮想関数 (virtual function) となる。仮想関数は「メソッド」と呼ばれることもある。派生クラスにて、基底クラスの仮想関数と名前および引数の数や型の順序が同じ関数を定義することでオーバーライドする(C++11以降では、overrideキーワードにより修飾することでオーバーライドを明示することもできる)。基底クラスの仮想関数を派生クラスでオーバーライドした場合、実際に呼び出される関数はオブジェクトの型によって決定される。基底クラスのポインタのみが与えられた場合、コンパイラはオブジェクトの型をコンパイル時に特定できず正しい関数を呼び出せないため、実行時にこれを特定する。これをダイナミックディスパッチと呼ぶ。仮想関数により、オブジェクトに割り当てられた実際の型に従って、最上位の派生クラスで実装した関数が呼び出される。一般的なC++コンパイラは仮想関数テーブルを用いる。オブジェクトの型が判明している場合はスコープ解決演算子を利用して仮想関数テーブルを使わないようにバイパスすることもできるが、一般的には実行時に仮想関数の呼び出しを解決するのが普通である。 通常のメンバー関数に加え、オーバーロードした演算子やデストラクタも仮想関数にできる。原則的にはクラスが仮想関数を持つ場合はデストラクタも仮想関数にすべきである。コンストラクタやその延長線上にあるコピーコンストラクタはコンパイルされた時点でオブジェクトの型が確定しないため仮想関数にできない。しかし、派生オブジェクトへのポインタが基底オブジェクトへのポインタとして渡された場合に、そのオブジェクトのコピーを作らなければならない場合は問題が生じる。このような場合はclone()関数(またはそれに準じる物)を仮想関数として作成するのが一般的な解決方法である。clone()は派生クラスのコピーを生成して返す。 = 0をメンバー関数宣言の末尾セミコロンの直前に挿入することにより、メンバー関数を純粋仮想関数 (pure virtual function) にできる。純粋仮想関数を持つクラスは純粋仮想クラスと呼ばれ、このクラスからオブジェクトを生成することはできない。このような純粋仮想クラスは基底クラスとしてのみ利用できる。派生クラスは純粋仮称関数を継承するため、派生クラスのオブジェクトを生成したい場合は全ての純粋仮想関数をオーバーライドして実装しなければならない。純粋仮想関数を持つクラスのオブジェクトを生成しようと試みるようなプログラムは行儀が悪い。
※この「仮想関数」の解説は、「C++」の解説の一部です。
「仮想関数」を含む「C++」の記事については、「C++」の概要を参照ください。
- 仮想関数のページへのリンク