他の知的財産権との調整
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 06:16 UTC 版)
物品の立体的形状は、特許権、実用新案権、意匠権、著作権の対象になることもあるため、立体商標と対象とする商標権は、これらの独占排他権と抵触することがある。たとえば、登録商標の立体的形状が何らかの技術的効果を発現する場合、当該形状は特許権や実用新案権の対象にもなる(特許法)。また、その立体的形状が、視覚を通して美観を起こさせる物品の形状等であれば、当該形状は意匠権の対象にもなる(意匠法2条1項)。さらに、その立体的形状が、思想または感情の創作的表現であれば、当該形状は著作権の対象にもなる(著作権法2条1項1号)。 これらの権利を保護する法益は異なるため、同一の形状を対象とする特許権、実用新案権、意匠権、著作権が、それぞれ異なる者に適法に帰属することがある。しかし、立体商標についての商標権者が、当該立体商標と同一の形状を対象とする他の独占排他権の効力を受けることなく、自己の登録立体商標を自由に使用することを無条件に認めてしまうと、他の権利者の利益が著しく損なわれることになる。 そこで、商標法29条は、これらの相互に抵触する権利関係の調整を図っている。すなわち、自己の商標権に係る商標登録出願日と、他の権利に係る登録出願日(著作権の場合は著作物の創作日(著作権発生日))の先後を基準として、自己の商標登録出願の出願日よりも前にされた出願(著作権の場合は創作)に係る権利との関係では、当該先の出願に係る権利者の許諾がない限り、自己の登録立体商標を使用できないこととした。 たとえば、甲が有する意匠権と乙が有する商標権が抵触し、甲の意匠登録出願が2005年4月、乙の商標登録出願が2006年4月にされていた場合、甲が自己の登録意匠を自由に実施することができるが、乙が自己の登録立体商標を使用するには、甲の許諾を必要とする。
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