人工心肺接続の手順
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 02:22 UTC 版)
人工心肺に接続し体外循環の準備を行う手順について述べる。 大血管の露出 心臓露出後、大動脈遮断を確実にするために大動脈周囲を剥離する。大動脈後面に鉗子が通るのを確認し、シロッカーテープでテーピングしておく。 続いて同様に上下大静脈周囲を剥離しテーピングする。大静脈は大動脈に比較して脆弱であり時に損傷を起こすことがあるので注意を要する。 送血管挿入 ここでは送血管を大動脈から直接挿入する場合について述べる。大腿動脈など他の部位から体外循環を行う場合も手順は概ね同様である。 挿入予定部位に巾着縫合(タバコ縫合)を二重にかけ、巾着縫合の中央をメスで突き刺し、そこから送血管の先端を挿入する。巾着縫合の糸はターニケットで締め上げる。次いでターニケットの管と送血管を一緒に結紮し、さらに創縁に固定する。送血管は逆行性に血液で満たしたあと、気泡が内部に残らないように注意しながら人工心肺の動脈回路に接続する。ここでMEが動脈回路の拍動を確認する。 脱血管挿入 脱血管挿入の方法には、上下大静脈へ2本の脱血管を挿入する方法や、1本の太い二段式脱血管を右心耳から下大静脈に向けて挿入する方法などがある。術式によるが、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、三尖弁手術など右房切開を必要とする場合は上下大静脈の2本脱血にする必要がある。脱血管は、右心耳および右房下部においた巾着縫合から挿入するか、または上下大静脈に直接挿入する。挿入後、人工心肺の静脈回路に接続する。 続いて術者は回路のクランプを開放し、MEが人工心肺のポンプ作動を開始する。 心筋保護カニューレ挿入 心筋保護液投与法には、後述するように順行性と逆行性の2種類がある。順行性投与では、大動脈基部に小さな巾着縫合をかけてその中央にカニューレを挿入し、ターニケットを締めて固定する。逆行性投与では、右房中央に巾着縫合をかけて中央に小孔を開けてそこから逆行性カニューレを挿入し冠静脈洞内へ進めるか、または上下大静脈への脱血管挿入が完了して右房を切開した後、冠静脈洞に直視下に挿入し、冠静脈洞開口部に巾着縫合をおいて注入管のバルーンで固定する。 ベント挿入 左心系のベント(左心ベント, left ventricular vent)挿入は心臓の減圧と空気除去に有効な手法である。挿入部位としては、左室心尖部、右上肺静脈、左房上部などがある。挿入後ターニケットで締め上げ固定するのはその他のカニューレ挿入の手順と同様である。 その他、空気塞栓の危険性なしに右心系と左心系両方の過膨張を防ぐ方法として、肺動脈からのベント挿入を行う方法もある。 以下に代表的なカニューレ挿入部位を示す。 脱血部位送血部位心筋保護液右房 近位大動脈, 大動脈遮断鉗子より末梢側 近位大動脈, 大動脈遮断鉗子より中枢側 大静脈 大腿動脈 冠静脈洞 (逆行性投与) 大腿静脈 腋窩動脈 冠動脈開口部 遠位大動脈 バイパスグラフト(CABGの場合) 心尖部
※この「人工心肺接続の手順」の解説は、「開心術」の解説の一部です。
「人工心肺接続の手順」を含む「開心術」の記事については、「開心術」の概要を参照ください。
- 人工心肺接続の手順のページへのリンク