二型の存在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/02 14:05 UTC 版)
田辺湾には殻で明瞭に区別できる二型しか生息せず、それぞれC型(Form C)とP型(Form P)と名付けられている。C型は結節が円錐形(conical)にとがり、結節間の淡色部が広く、成長すれば大半が殻高2cm以上、時に3cm以上になる。一方のP型では結節が乳頭状(papillary)で大きく丸く膨み、結節間の淡色部は狭く、成長しても2cm以上になることは少ない。これら二型間では交雑も少なく、観察された131例の交尾のうち、わずか4例に過ぎなかったと報告されている(阿部, 1985)。 両者は食性でも異なり、C・P型とも小さいうちはイワフジツボを食べているが、成長するに従いC型はクロフジツボやカメノテその他の二枚貝などの大型の複数種を食べるようになり、一方のP型は成長してもずっとイワフジツボのみをほぼ専食するという。また飼育下での観察では、摂食速度や成長速度がC型がP型を上回っていることや、特定の餌で飼育した個体は他の個体よりもその餌を食べる傾向が強くなることなども知られている(阿部, 1994)。 また両型はアロザイム分析の結果でも遺伝的に異なることが明らかにされ、P型は湾内のどの場所でも少数派ではあるが、特に湾奥部で少なく外海に近い場所ほど出現比率が高くなること、数千年前の遺跡から出土する貝殻でも両型が区別できること、軟体部の形態では全く識別できないことなども報告されている(Hayashi , 1999) 。
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