一階方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/24 19:26 UTC 版)
特に非斉次の一階方程式を考え、その定常状態について確認しよう。すなわち、定ベクトル b を持つ方程式 x t = A x t − 1 + b {\displaystyle x_{t}=Ax_{t-1}+b} に関して、それが定める系の定常状態 x* とは、それ以降に新たな値を導くことがない状態に到達したベクトル x の値を言う。定義により x* は当該の方程式において x t = x t − 1 = x ∗ {\textstyle x_{t}=x_{t-1}=x^{*}} と置いたものを満足するものでなくてはならず、それを x* に関して解いて x ∗ = ( I − A ) − 1 b {\textstyle x^{*}=(I-A)^{-1}b} を得るが、ここで I − A は可逆であるものと仮定している(ただし、I は n-次単位行列)。 定常状態が存在するとき、上記の非斉次方程式は、 [ x t − x ∗ ] = A [ x t − 1 − x ∗ ] {\displaystyle [x_{t}-x^{*}]=A[x_{t-1}-x^{*}]} なる形の斉次方程式に書き直すことができる。この斉次方程式が安定である—すなわち、xt が定常状態 x* に漸近収束する—ための必要十分条件は、(実または複素)変換行列 A の固有値が 1 より小さい絶対値を持つことである。 方程式を斉次形で y t = A y t − 1 {\textstyle y_{t}=Ay_{t-1}} と書くことにすれば、よく知られた仕方により、初期条件すなわち y の初期値 y0 から反復適用と置換から直ちに y 1 = A y 0 , y 2 = A y 1 = A A y 0 = A 2 y 0 , y 3 = A y 2 = A A 2 y 0 = A 3 y 0 {\displaystyle {\begin{aligned}y_{1}&=Ay_{0},\\y_{2}&=Ay_{1}=AAy_{0}=A^{2}y_{0},\\y_{3}&=Ay_{2}=AA^{2}y_{0}=A^{3}y_{0}\end{aligned}}} のように各項の値は順次求まり、そして t に関する数学的帰納法によって一般に y t = A t y 0 {\textstyle y_{t}=A^{t}y_{0}} が成立することが証明される。さらに A が対角化可能ならば、A はその固有値と固有ベクトルを用いて書けるから、その解は y t = P D t P − 1 y 0 {\displaystyle y_{t}=PD^{t}P^{-1}y_{0}} の形に与えられる。ここに P はその列ベクトルが A の固有ベクトルの全体からなる n-次正方行列(固有値が全て異なると仮定した場合には必ず可逆)であり、D は A の固有値が主対角線上に並ぶ対角行列である。 この解の様子が上記の安定性について得ることを動機づける。すなわち At が十分な時間経過後に零行列となるための必要十分条件は A の任意の固有値が絶対値に関して 1 より小さいことである。
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