リクルートと調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/21 08:39 UTC 版)
LIG1遺伝子は 120 kDa、919残基からなる、DNAリガーゼIと呼ばれる酵素をコードする。DNAリガーゼIはN末端の複製工場標的化配列(replication factory-targeting sequence、RFTS)、続いて核局在化配列、3つの機能的ドメインからなる。3つの機能的ドメインはN末端側からDNA結合ドメイン(DBD)、触媒を行うヌクレオチジルトランスフェラーゼ(英語版)(NTase)ドメイン、C末端のオリゴヌクレオチド/オリゴ糖結合(OB)ドメインである。N末端部分は触媒活性を持たず、細胞内での活性には必要ないが、RFTSを含んでおり複製工場(replication factory)と呼ばれるDNA複製部位へのリクルートに利用される。 DNAリガーゼIの活性化とリクルートには、翻訳後修飾が関係しているようである。N末端の4か所のセリン残基に対しリン酸化が行われ、Ser51、Ser76、Ser91のリン酸化はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によって、Ser66のリン酸化はカゼインキナーゼ2(CK2)によってそれぞれ行われる。Rossiらは、Ser66が脱リン酸化されているときにRFTSはPCNA(英語版)と相互作用すると提唱しており、Tomらによってin vitroでの確証が行われている。どちらのデータもDNAリガーゼIのN末端領域がin vivoで核内での酵素機能を調節する役割を果たすことに対する妥当なエビデンス提供している。さらに、触媒を行うC末端ドメインにはサイクリン結合モチーフ(Cyモチーフ)が同定されており、変異体解析からSer76とSer91のリン酸化に関与していることが示された。N末端の複数のセリンがCDKとCK2の基質となり、DNAリガーゼIが細胞周期のS期に複製工場へリクルートされた際にRFTSとPCNAとの相互作用を調節しているようである。 DNAリガーゼIの構造の模式図
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