モラリスト概念の拡張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 03:16 UTC 版)
定義を2つの方向に拡張することで、概念の妥当性は損われるもののモラリストの範囲を広げることができる。 ラ・ロシュフコーやラ・ブリュイエールの同時代人で、人間の振舞いについて書いたが、秩序立った型に嵌った形式で書いた者。ピエール・ニコル(フランス語版)(Essais de Morale)、ジャック・エスプリ(フランス語版)(La Fausseté des vertus humaines)、サン=テヴルモン(フランス語版)、ルネ・デカルト(『情念論』)などである。これらの中にはラ・ロシュフコーに極めて近い視点を取った者もあり、特にエスプリがそうで、ラ・ロシュフコーとエスプリはそれぞれの作品の着想で協働したこともあった。しかしながら、厳密な意味ではこれらの作家とモラリストの間には本質的な違い、主題系の共通点へと還元されない読みと思考のあり方を引き起こす形式の有無という違いがある。モラリストが哲学的な言説に対し保っている論争的な関係を把握することなく、19世紀の批評家はしばしばモラリストを哲学もしくは骨相学の一部と同一視した。それは概念を役に立たないものにしてしまうし、とりわけテクストの形式的な特性を見逃してしまっており、今日もなお読みやすいものとして成功していることと、18世紀から19世紀への変わり目にかけて発達した文学的な概念と融合していったことがその主な原因である。対照的に、モラリストを自分たちと同列と見做した哲学者はほとんどおらず、それは尤もなことである。 人間の振舞いや人間そのものという主題について、哲学的な論考の形式を取らず、体系や証明も気にかけずに書いた者。古典的なモラリストとの共通点は、箴言、断章(フランス語版)、警句などの短い形式の使用にある。この意味では、ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク、(『人間的な、あまりにも人間的な』以降の)フリードリヒ・ニーチェ、アルベール・カミュ、パスカル・キニャールといった多様な著述家をモラリストに含めることができる。これらの作家たちが人間の振舞いを説明するために断続的な形式に頼るのは17世紀の時点とは知的な意味でも歴史的な意味でも違う状況から生じたことであるので、こうした同一視は適切なものではないとも考えられる。
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