マグマの海仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 09:22 UTC 版)
アポロ11号によって初めて地球に持ち帰られた月の石は、玄武岩であった。ミッションの着陸地点は静かの海であったが、高地から飛んできた数mmの岩も拾われた。これらは主に斜長岩であった。月面上での斜長岩の発見により、月の大部分が一度融け、マグマの海の分別晶出で地殻が形成されたという大胆な仮説が提唱された。 ジャイアント・インパクトの自然な帰結として、月に再降着した物質は高温であったはずである。現在のモデルでは、月の大部分は、月形成後に融け、マグマの海を成した。このマグマの海は約500kmの深さにもなり、マグマの結晶化によって組成の異なる地殻とマントルからなる分化天体となったと考えられている。 マグマの海の結晶化が進むと、カンラン石や輝石等の鉱物が沈んでマントルを形成する。結晶化の4分の3が終了すると、斜長石(灰長石)の晶出が始まる。斜長石の結晶はその低い密度のために浮かびあがり、斜長岩からなる浮揚地殻を形成する。不適合元素(液相に分配されやすい元素)は、結晶化の進行に伴って次第にマグマの中に濃縮し、地殻とマントルの間に挟まれた場所にKREEPの割合の多いマグマが形成される。月の高地が斜長石に富むこととKREEPリッチな物質の存在は、この説を支持する証拠である。
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