ポストペロブスカイトとは? わかりやすく解説

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ポストペロブスカイト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/03 05:33 UTC 版)

地球の構造[1]

ポストペロブスカイト: post-perovskite)は、ケイ酸マグネシウム (MgSiO3) の高圧である。この物質は、地球岩石マントルの主要酸化物成分(MgO と SiO2)から成り、その安定に存在できる圧力温度領域から推測して、地球マントルの最深部数百キロメートルの範囲で発生しうると考えられている。

性質・特徴

ポストペロブスカイトは、合成固体化合物の CaIrO3 と同じ結晶構造を持ち、しばしば文献中で「MgSiO3 の CaIrO3 型相」と呼ばれる。ポストペロブスカイトの結晶系直方晶(斜方晶)系空間群Cmcm であり、結晶構造は SiO6-八面体の層が b 軸方向に積み重なったものである。

地表近くの上部マントルの圧力では、MgSiO3ケイ酸塩鉱物である頑火輝石(エンスタタイト)[2]として存在する。

サイド・ストーリー

ポストペロブスカイトは、2004年日本を中心とする2つのグループ(東京工業大学グループと海洋研究開発機構/スイス連邦工科大学グループ)によって独立に発見された。両グループの発見は、兵庫県に建設された最先端放射光施設 SPring-8 およびレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル (LHDAC) を活用した、地球最深部の温度圧力を実験室内に再現し超高温高圧下でX線結晶構造解析を行う技術を利用している。また、古典力学および量子力学に基づいた分子シミュレーションの手法が、ポストペロブスカイトの発見およびその後の研究に大きな役割を果たした。東工大グループの論文が Science[3] に出版された2か月後、海洋研究開発機構/スイス連邦工科大学グループの論文[4]および東工大グループの第2論文[5]Nature に出版された。

また、これと同時期に、現愛媛大学のグループが、第一原理計算と呼ばれる理論シミュレーションから、ポストペロブスカイトの結晶構造変化や安定温度圧力条件の詳細を示した[6]

「ポストペロブスカイト」という名称は、地球マントルのほぼ全領域で安定な MgSiO3 がとるペロブスカイト構造に由来する。「ポスト」という接頭辞は、圧力の増大(歴史的には高圧鉱物物理学の進歩)にしたがって、ポストペロブスカイトがペロブスカイトの「後」に現れることによる。

脚注

  1. ^ http://www.gsj.jp/geomap/earth/earthJ.html
  2. ^ 頑火輝石とは、地殻火成岩変成岩中に見出される輝石である。
  3. ^ Motohiko Murakami; et al. (2004). “Post-Perovskite Phase Transition in MgSiO3”. Science (American Association for the Advancement of Science) 304 (5672): 855-858. doi:10.1126/science.1095932. ISSN 0036-8075. NAID 80016646994. PMID 15073323. 
  4. ^ Artem R. Oganov; Shigeaki Ono (2004). “Theoretical and experimental evidence for a post-perovskite phase of MgSiO3 in Earth's D″ layer”. Nature (Nature Publishing Group) 430: 445-448. doi:10.1038/nature02701. ISSN 0028-0836. PMID 15269766. 
  5. ^ T. Iitaka; et al. (2004). “The elasticity of the MgSiO3 post-perovskite phase in the Earth's lowermost mantle”. Nature (Nature Publishing Group) 430: 442-445. doi:10.1038/nature02702. ISSN 0028-0836. NAID 80016723387. PMID 15269765. 
  6. ^ Taku Tsuchiya; et al. (2004). “Phase transition in MgSiO3 perovskite in the earth's lower mantle”. Earth and Planetary Science Letters 224 (3–4): 241–248. doi:10.1016/j.epsl.2004.05.017. ISSN 0012-821X. 

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