ポアンカレ予想への挑戦と性質P予想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/27 20:46 UTC 版)
「アーエイチ・ビング」の記事における「ポアンカレ予想への挑戦と性質P予想」の解説
基本的な問題であるにも拘わらずアンリ・ポアンカレを含む幾人もの優秀な数学者が解決をできなかったポアンカレ予想は当時から非常に大きな注目を集めていた。当然トポロジストであったビングはこの予想に挑戦した。彼は1958年の論文でポアンカレ予想を特殊化した上で証明した。(ポアンカレ予想の条件は多様体上の全てのループが一点に縮められるというものだが、ビングは全てのループが縮められるループとアンビエント同値であるという条件を加えた。) ビングはポアンカレ予想を絶対に正しいとは信じてはいなかったと言われる。彼は二週間置きに証明の探求と反例の構築を繰り返していた。そして反例の構築を試みているときにビングは結び目のある性質に注目した。ビングが性質Pと名付けたこの性質を持つ結び目で3次元球面にデーン手術を施すと単連結な多様体が造られる。自明な結び目はこの性質を持っており、また、それを用いて作った単連結多様体はどんなに複雑にしてあったとしても3次元球面と同相になる。アンドレイ・ウォーレスとW・B・R・リコリッシュによってねじれのない3次元多様体は全て3次元球面にデーン手術を施すことで造られることが知られていたため、性質Pを持つ結び目が全て自明だということになればねじれを持つ多様体を除いてポアンカレ予想は正しいということになる。この予想は性質P予想と呼ばれ証明、反証の双方から探究された。(性質P予想は2005年になってやっとピーター・クロンハイマーとトマス・ムロフカによって証明された。皮肉なのはこの2年前にペレルマンの論文が発表されたことだろう。彼等の証明は非常に高度なものだったが、反響があまり芳しくなかった点は否めない。) 結局、ビングがポアンカレ予想の証明(もしくは反証)を見ることはなかった。ある時、彼は自分のことを3人称を用いて語った。「ビングはポアンカレ予想にアタックをかけた・・・・が、部分的な解決にしか達せなかった」
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