ヘリウム4の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 00:53 UTC 版)
ヘリウム4は、零点振動の効果により低温で液化しても、絶対零度に到るまで液体のままで存在する。つまり、固体にはならない。そして、2.17K(ケルビン)で比熱の跳びがあり、二次の相転移を起こし超流動の状態となる。この転移温度のことを比熱の跳びの形からλ点という。 超流動状態では、ヘリウム4は粘性が0の状態(He II相)になっており、壁を登っていったり、原子一個が通れる隙間さえあればそこから漏れ出す。ただ、有限温度の領域では常流体(普通の液体としての性質を示す:He I相)と超流体(粘性ゼロ:He II相)が共存している(→二流体理論)。超流体の状態では、ボース粒子であるヘリウム4がボース凝縮している。 超流体部分がボース凝縮しているのではないかということは、1938年、フリッツ・ロンドンによって最初に指摘された。ロンドンは、ヘリウム4原子を理想ボース気体とみなして、超流動の転移温度をボース凝縮温度とし、その理論値3.13Kを導いた。この値は実験観測値2.17Kに近い値と言える。値のずれは、超流動状態にあるヘリウム4は液体状態であり、理想ボース気体とは異なる状態であること、ヘリウム原子間の相互作用、原子同士が接近したときに働く強い斥力の影響などによる。理想ボース気体では、粒子間の相互作用を考慮していないが、その後、相互作用のある場合への理論的な拡張が行われている。ただ、理想ボース気体でのボース凝縮状態への相転移は三次の相転移であるが、ヘリウム4(ヘリウム3も同様)の超流動への転移は二次の相転移である。この部分に対する理論面からの解釈はまだ十分なされていない。 また、超流動状態では非常に高い熱の伝導性を示す。これは、熱源に対してヘリウム4のうちの超流動成分が近づくように、常流動成分が遠ざかるように運動するためである(一種の対流であると言える)。この高い熱伝導性により、超流動ヘリウムは全体が熱的に非常に均一になっている。
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