フォースプレイと走塁放棄の関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 08:13 UTC 版)
「走塁放棄」の記事における「フォースプレイと走塁放棄の関係」の解説
日本の公認野球規則5.09(b)(2)には、日本野球規則委員会が独自に設けた【注】に、「フォースの状態におかれている走者に対しては、本項を適用しない。」とある。したがって日本では、この【注】により、フォースの状態にある走者は走塁放棄によるアウトが宣告されない。 この【注】は、1985年の公認野球規則改正で設けられたものである。改正の背景となったのは、前年1984年8月14日の、全国高等学校野球選手権大会2回戦、京都西高校対新潟南高校の試合の出来事である。 3-3で迎えた延長11回裏、新潟南高校の攻撃。二死満塁で、打者は三遊間を破る決勝適時打を打った。このとき、一塁走者が二塁に触れずに本塁前に整列に来た。このことに京都西高校の選手は誰も気づかなかった。結局、三塁走者の得点はそのまま記録されて、新潟南高校の勝利が決定した。このプレイでは、本来ならば審判員が規則7.08(a)(2)(当時)を適用して、一塁走者にアウトを宣告しなければならなかったが、アピールプレイと勘違いして、裁定を下さなかった。 このプレイを受けて、翌1985年に規則7.08(a)に【注3】(当時)が設けられた。これ以後、一打サヨナラとなる場面で、フォースの状態にある一塁走者や二塁走者が、「試合が決した」と思って次の塁に達することなくベンチに戻ったり、本塁前に整列に来たりした場合、進塁の義務を果たしていないことについては規則5.09(b)(2)【注】を適用し、走塁放棄によって走者がアウトを宣告されることはなく、アピールプレイとする運用がなされている。 もともとは上記のプレイがきっかけで制定された【注】であるが、この規則は、悪意をもった後位の走者が故意に走塁放棄してアウトになり、前位の走者のフォースの状態を解除することの防止にもつながる。 例として、同点の最終回裏、無死満塁で、打者が二塁手の正面にゴロを打った場合を想定する。二塁手はゴロを捕ったら本塁に送球する以外に選択肢がない。本塁はフォースプレイであるから、捕手が送球を受けて本塁に触球し、間に合うならば一塁にも転送して併殺を狙うことが考えられる状況である。ここで二塁走者が、「自分が先にアウトになれば、三塁走者のフォースの状態が解除され、本塁に送球しただけではアウトにならなくなる」と考え、三塁ではなく、左翼手の守備方向に走って、走塁放棄を試みたとする。これが走塁放棄となるならば、後位の走者が先にアウトになったから、三塁走者はフォースアウトにならず、捕手は三塁走者に触球しなければならない。捕手が本塁に触球して併殺をとろうと一塁に送球した場合、三塁走者はアウトになっていないから本塁に到達すれば得点が認められ、サヨナラ勝ちになる。しかし、二塁走者はフォースの状態にあるから、規則5.09(b)(2)【注】により、走塁放棄は適用されない。よって、三塁走者は本塁フォースアウトである。
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