ビタミンB12の合成とウッドワード・ホフマン則
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「ロバート・バーンズ・ウッドワード」の記事における「ビタミンB12の合成とウッドワード・ホフマン則」の解説
1960年代前半、ウッドワートはこれまでに合成された中で最も複雑な天然物 - ビタミンB12の全合成に着手した。彼の同僚であったチューリッヒのアルバート・エッシェンモーザーとの見事な協力により、ほぼ100名の学生と博士研究員からなるチームがこの分子の合成を長年研究した。この仕事は最終的に1973年に発表され、有機化学の歴史において画期的な出来事の一つとなっている。ビタミンB12の合成はほぼ100段階からなり、ウッドワードの仕事において常に特徴的であった綿密な計画と分析を含んでいる。この仕事は他の何よりも、十分な時間と計画があればどんな複雑な物質の合成も可能である、と有機化学者達に確信させた。しかしながら、2011年現在、ビタミンB12の全合成はこれ以後報告されていない。 同年に、ウッドワードがビタミンB12合成の間に得た所見から、ウッドワードとロアルド・ホフマンは、有機化学反応の生成物の立体化学を予測する、現在ウッドワード・ホフマン則と呼ばれる理論を発見した。ウッドワードは彼の有機合成化学者としての経験に基づいて、分子軌道の対称性に基づく彼の着想を定式化した。ウッドワードは、ホフマンに彼の考えを検証するための理論的計算を依頼し、ホフマンは彼の考案した拡張ヒュッケル法で計算を行った。この「ウッドワード・ホフマン則」による予測は、多くの実験によって実証された。ホフマンは、異なるアプローチで同様の業績を挙げた日本人化学者福井謙一と共に1981年のノーベル化学賞を受賞した。存命であれば、ウッドワードも間違いなく2つ目のノーベル賞を得ただろう。 最近、雑誌Natureに、ウッドワード・ホフマン則を力学的応力によって打ち破る例が報告されている。
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