バンド内共鳴トンネリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 23:17 UTC 版)
「共鳴トンネルダイオード」の記事における「バンド内共鳴トンネリング」の解説
単一障壁を越える量子トンネリングでは、透過係数(英語版)すなわちトンネリング確率は、入射粒子のエネルギーが障壁の高さよりも低い場合つねに1よりも小さい。2つの障壁が互いにごく近くに存在するポテンシャル構造を考えると、その透過係数はさまざまな標準的手法をもちいて(入射粒子エネルギーの関数として)算出することができる。 2重障壁を越えるトンネリングは、1951年にデヴィッド・ボームによりWKB近似の下で初めて解かれた。ボームはこの際、特定の入射エネルギーにおいて透過係数に共鳴が起こることを指摘し、特定のエネルギーの場合には透過係数は1となり、2重障壁の存在にもかかわらず粒子は素通りすることを示した。この現象を共鳴トンネリング(resonant tunneling)と呼ぶ。ここで、一つ一つの障壁の透過係数は常に1より小さいにもかかわらず、障壁を2重にすると透過係数が1になることは興味深い。 その後、1964年に L. V. Iogansenは半導体結晶中に生じた2重障壁を越えた電子の共鳴透過の可能性について論じた。1970年代初頭、Tsu, Esaki, Changは有限超格子の2端子間電流電圧特性を計算し、透過係数だけでなく電流電圧特性にも共鳴が生じうることを示した。障壁の数が2よりも大きなポテンシャル構造についても共鳴トンネリングは生じる。分子線エピタキシー技術の進展により、テラヘルツ周波数領域において負性抵抗を示しうることが1980年代に報告された。これにより多重障壁構造とトンネリングについての研究に大きな注目があつまるようになった。 共鳴トンネリングに必要なポテンシャル構造は、異なる種類の半導体同士のヘテロ接合を用いて伝導帯端あるいは価電子帯端にポテンシャル障壁および量子井戸を作ることにより実現できる。
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