デーンの解答
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/10 15:29 UTC 版)
「ヒルベルトの第3問題」の記事における「デーンの解答」の解説
デーンの証明は、抽象代数学によって幾何学上の不可能性が示される一例である。他の例には立方体倍積問題や角の三等分問題がある。 2個の多面体があり、一方を有限個の多面体に切断して組み換えることで他方を作ることが可能なとき、これらは分割合同(scissors-congruent)であると言う。分割合同な2個の多面体の体積が等しいことは自明であり、ヒルベルトが問うたのはこの逆である。 任意の多面体 P に対し、デーンは現在デーン不変量(英語版)と呼ばれているある量 D(P) を定義し、以下の性質を持つようにした: P がある平面で2個の多面体 P1 と P2 に切断されたとすると、D(P) = D(P1) + D(P2) である。 これより、 P が n 個の多面体 P1,...,Pn に切断されたとすると、D(P) = D(P1) + ... + D(Pn) が成り立つ。特に、 もし2個の多面体が分割合同であれば、それらのデーン不変量は一致する。 デーンは次に、正六面体のデーン不変量は常に0である一方、正四面体のデーン不変量は常に0以外の値となることを示し、先述の主張を立証した。 多面体の不変量は辺長と二面角に基づいて定義される。多面体が切断されるとき、いくつかの辺も2つに切断され(これらはデーン不変量に対し辺長に比例した寄与をしていなければいけない)、もし切断面がある辺を含むなら、対応する面の角は2つに分割される。切断によって通常は新しい辺や角が生まれるが、これらのデーン不変量への寄与はちょうど打ち消し合うよう定義をしなくてはならない。ある面が2つの面に分かれるとき、新たに生じる二面角の和は必ず π に等しいことから、π の整数倍の加減による寄与がトータルでゼロになるように不変量を定義することにする。 以上全ての要請は、D(P) を実数体 R と 剰余加群 R/(Qπ) のテンソル積として定義することで実現できる。このテンソル空間では、第2成分が π の有理数倍である元はゼロである。第3問題の解決のためだけならば有理整数環 Z 上のテンソル積を考えれば事足りるが、次節で述べる第3問題の逆の証明はより困難でベクトル空間の性質を必要とするため、その場合は有理数体 Q 上のテンソル積と考える必要がある。 ℓ(e) を辺 e の長さ、θ(e) をこの辺を共有する二面のなす角(単位はラジアン)とする。このときデーン不変量を D ( P ) = ∑ e ℓ ( e ) ⊗ ( θ ( e ) + Q π ) {\displaystyle \operatorname {D} (P)=\sum _{e}\ell (e)\otimes (\theta (e)+\mathbb {Q} \pi )} と定義する。ここで和は多面体 P の全ての辺 e にわたってとるものとする。
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