タスミーヤ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:47 UTC 版)
「神の名によりて~」という祝祷句を意味するアラビア語には、tasmiyya تَسْمِيَّة という語もあり、これは「バスマラ」という語よりも古い時代からある言葉である。先イスラーム時代(ジャーヒリーヤ)からアラブには、重要な行為の前にタスミーヤを唱える慣習があった。タスミーヤの慣習には為さんとする行為に神的祝福を求め、その行為を神聖化するという意味があり、先イスラーム期のメッカの人々はしばしば「ラート神(al-Lāt)の名によりて~」「ウッザー神(al-ʿUzzā)の名によりて~」という祝祷句を唱え、各神による祝福を祈願していた。 イスラーム的タスミーヤたるバスマラに含まれる「ラフマーン」(定冠詞も込みで言えばアッラフマーン al-raḥmān)については、前述のように、「慈悲深い」という意味の形容詞に冠詞が付加され抽象名詞化されたものであり、唯一神アッラーの美名のひとつと考えるのが古典的な教義成立以後の多数派の解釈である。しかし、20世紀前半のフランスの東洋学者ジョミエが指摘したところによると、この語 al-raḥmān は、イスラーム誕生以前から南アラビアやアラビア半島中央部においては唯一神の神名であった。アラビア半島中央部の人々は預言者ムサイリマを介して、この「慈悲深い」という名を持つ唯一神から啓示を受け取っていたとされる。また、タバリーによると、フダイビーヤの和議の際、メッカ方の代表者は al-raḥmān の名のもとに誓い立てすることを拒否した。ジョミエの説によると、預言者ムハンマドがヤマンとヤマーマの神の名であった「ラフマーン」をクルアーン中に頻繁に登場させた理由は、絶対的唯一神の慈悲深さを強調するという宣教上の目的があったためかもしれない。
※この「タスミーヤ」の解説は、「バスマラ」の解説の一部です。
「タスミーヤ」を含む「バスマラ」の記事については、「バスマラ」の概要を参照ください。
- タスミーヤのページへのリンク