サバクキンモグラとは? わかりやすく解説

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サバクキンモグラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 07:53 UTC 版)

サバクキンモグラ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: アフリカトガリネズミ目 Tenrecomorpha
: キンモグラ科 Chrysochloridae
亜科 : ケープキンモグラ亜科
Chrysochlorinae
: サバクキンモグラ属
Eremitalpa Roberts, 1924[2]
: サバクキンモグラ E. granti
学名
Eremitalpa granti
(Broom, 1907)[2]
英名
Grant's golden mole[1]
亜種[3]
  • E. g. granti
  • E. g. namibensis
分布域

サバクキンモグラ (Eremitalpa granti) は、キンモグラ科に分類される哺乳類。本種のみでサバクキンモグラ属を構成する[4]。主に南部アフリカの乾燥した砂丘に生息する。キンモグラの中でも最小の種で、体長は10cmに満たない。

分布と生息地

南アフリカ共和国ケープ州南西部と、ナマクアランドからナミビアナミブ砂漠北部にかけて、アフリカ大陸南西部の限られた地域にのみ分布する[5][6]Eremitalpa granti granti はセント・ヘレナ湾南岸からポート・ノロスにかけて、Eremitalpa granti namibensis はナミブ砂漠のオレンジ川以北に分布する[6]

海岸沿いの砂の柔らかい砂丘や、砂丘間の窪地に生息する。Stipagrostis sabulicolaCladoraphis spinosaStipagrostis ciliata など、イネ科植物が点在する地域を好む。巣穴を持たず、植物の下で休息する。耕作地田園地帯でも見られる[1]

形態

キンモグラ科の最小種で、体長は70-85mm、体重は16-32gである。性的二形があり、雄の方が大きい[6]。体形は扁平で、上から見ると卵型である[5]。毛は柔らかく、他のキンモグラよりも長い。背中の毛は12mmで、淡い灰色がかった黄色であり、銀色の光沢がある。側面の毛は約20mmで、背中の毛に比べて色が薄く、黄色みが強い。顔と腹面は色が薄く、黄色がかった白色である。腹面は赤褐色の場合もある。幼獣の毛は銀色で、頬には淡い模様がある[5][6]

四肢は短く強靭で、体の内側に位置する。前肢の第1 - 3指には長い爪が生え、下側は空洞になっている。これは穴掘りへの適応である。キンモグラの中で唯一、第4指の爪も発達する[4][5][6]。後肢には水かきがあり、突出した厚い肉球を持つ。眼は皮膚に埋没しており、吻は硬い肉球で覆われる。これは穴掘りを補助し、鼻孔を砂から守る。E. g. namibensis は、E. g. granti よりもやや小型で、毛が短く、体色が異なり、頭蓋骨が短く幅広い[6]

生態と行動

行動

夜行性であり、単独で生活する。砂地では地中に巣穴を作っても崩れてしまうため、決まった巣穴を持たない。日中は50cmの深さまで穴を掘り、そこで休眠を行う。その間は代謝を低下させ、エネルギーの消費を減らす[6]。夜間には砂丘の表面を走り回るか、砂に潜ることで、振動を感知して獲物を見つける[7]。一晩で4.8キロメートル以上を掘り進んだ跡が確認された例もある[4]

食性と天敵

餌の大半は無脊椎動物で、特にシロアリの仲間である Psammotermes allocerus が多い。その他にも直翅類甲虫アリクモ、コナカイガラムシ科などを捕食し、ミズカキヤモリやトカゲなどの爬虫類も餌とする[5][6]。地表にいる獲物を砂中に引きずり込んで捕食することもある[4]。夜行性であるため、アフリカワシミミズクメンフクロウなど、同じ夜行性の捕食者が天敵である[6]

繁殖

繁殖期は10-11月で、妊娠期間は4-6週間と推定される。繁殖と出産の場所については良く分かっていない。幼獣は生後2-3ヶ月で自立し、体重約35-45gで母親の縄張りを離れる[6]

人間との関係

生息地がほとんど人の手が入っていない海岸沿いの砂漠のため、絶滅のおそれは低いと考えられている。一方でダイヤモンドの採掘や農地開発・観光開発による影響が懸念されている[1]

出典

  1. ^ a b c d Maree, S. (2015). Eremitalpa granti. IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T7994A21283661. doi:10.2305/IUCN.UK.2015-2.RLTS.T7994A21283661.en. https://www.iucnredlist.org/species/7994/21283661 2025年7月27日閲覧。. 
  2. ^ a b Gary N. Bronner & Paulina D. Jenkins, "Order Afrosoricida,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 71 - 81.
  3. ^ Perrin, Michael R.; Fielden, Laura J. (1999-12-03). “Eremitalpa granti”. Mammalian Species (629): 1. doi:10.2307/3504369. https://academic.oup.com/mspecies/article-lookup/doi/10.2307/3504369. 
  4. ^ a b c d Margaret A. Kuyper 「キンモグラ」今泉吉晴訳『動物大百科 6 有袋類ほか』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、32 - 33頁。
  5. ^ a b c d e 阿部永 「サバクキンモグラ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、133頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j Roth, Jason. “Eremitalpa granti (Grant's golden mole)”. Animal Diversity Web. 2025年7月27日閲覧。
  7. ^ Narins, Peter M.; Lewis, Edwin R.; Jarvis, Jennifer J.U.M.; O’Riain, Justin (1997-01). “The Use of Seismic Signals by Fossorial Southern African Mammals: A Neuroethological Gold Mine”. Brain Research Bulletin 44 (5): 641–646. doi:10.1016/S0361-9230(97)00286-4. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0361923097002864. 

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