ゴム弾性の構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 13:39 UTC 版)
分子間を共有結合で結合し、三次元網目構造を形成する高分子は、ガラス転移温度以上ではゴム弾性という特殊な性質を示すゴム状態となる。ゴム弾性とは、ゴムのように弾む性質ではなく、一見柔らかく塑性変形を起こしやすそうに見えるが、元に戻る応力が大きく、変形しにくいといった性質を指し、次のような特徴を持つ。 通常の固体ではその弾性率は1〜100 GPaであるが、ゴムは1〜10 MPaと非常に低い弾性率を示す。 このため、弱い力でもよく伸び、5から10倍にまで変形する。しかし外力を除くとただちに元の大きさまで戻る。伸びきった状態では非常に大きな応力を示す。 弾性率は絶対温度に比例する。 急激(断熱的)に伸長すると温度が上昇し、その逆に圧縮すると温度が降下する(Gough-Joule効果(英語版))。 変形に際し、体積変化がきわめて少ない。すなわちポアソン比が0.5に近い。 これはゴムの弾性がエントロピー弾性と呼ばれる、他の固体とは異なる機構で実現しているからである(他の固体ではエネルギー弾性という)。ゴムの弾性は、本来規則構造を持たない(非晶質)分子の配列が、外部からの力により規則的(結晶組織)になり、これが元の不規則な配列に戻ろうとするときの力によるもので、熱力学的には応力によるエントロピーの低下(ギブス自由エネルギーの増加)が元に戻ろうとする力による弾性である。
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