カルデラの成因について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 17:04 UTC 版)
「箱根火山の形成史」の記事における「カルデラの成因について」の解説
箱根火山のカルデラの成因についてはいくつかの説が唱えられている。久野は大陥没によって現在の箱根カルデラが誕生したと考えた。陥没の原因については、当初は火山活動以外のものを想定していたが、その後、大規模な噴火活動があったことが明らかとなったため、大噴火後に地面が一気に陥没してカルデラが誕生したとした。 ところが久野の晩年の研究で、陥没は一気に発生したわけではなく段階的に進み、陥没後に起こった侵食の結果、現在の箱根カルデラが出来たと修正された。これは温泉掘削のため行われたボーリング調査の結果、箱根火山の基盤となる岩石がかなり地表に近い場所に分布していることが明らかになり、またボーリングの試料からは外輪山を構成するのと同じ噴出物が見つからず、基盤となる岩石の上に直接中央火口丘由来の岩石が分布している例が多く見つかるなど、きわめて大規模な陥没が発生したとは考えにくくなったことによる。その他にも陥没説の欠点として箱根カルデラでは陥没型のカルデラで確認される、円形や弧の形をした断層が見られないことが挙げられ、研究の進展によって箱根火山では大規模な噴火が複数回発生したことが明らかになるにつれて、カルデラは複数の噴火によって形成されたのではないかとの説が浮上してきた。 その後、箱根カルデラはまず箱根火山の南東部が大規模に崩壊した山体崩壊が発生し、その結果、馬蹄型のカルデラが生まれ、その後、馬蹄型のカルデラ内に中央火口丘が噴出したというモデルが提唱された。この説は、箱根カルデラで大規模な陥没が発生した形跡がない点や、箱根火山から噴出したと考えられる噴出物の量は、大噴火によって箱根カルデラが形成されたとしては少なすぎる点を根拠として唱えられた。しかし大規模な山体崩壊が発生した場合に必ず現れる、崩壊した大量の土砂の堆積物や流れ山が箱根火山周辺に全く見当たらない点が難点とされ、また噴出物の量がカルデラ形成が行われたにしては少ない点については、大磯丘陵などで大規模な噴火に伴うテフラ層が多数検出されており、大規模な噴火が箱根カルデラの成因とみて問題ないとの反論がなされている。 最近の研究では、大規模な噴火によって山体が吹き飛ばされた上に噴出物が堆積した、直径4キロメートル以下の比較的小さなカルデラが複数誕生し、それらのカルデラが浸食活動の結果繋がって、現在のような単一の大きな箱根カルデラになったものとの説が出されている。この説の根拠としては、箱根カルデラ内に直径1-4キロ程度の陥没地形の跡が複数確認されること、中央火口丘付近のかなり浅い場所で基盤岩が検出されることが挙げられる。
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