カルデアの古さの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 15:08 UTC 版)
普遍史は、聖書の歴史記述が他民族のそれをも説明可能であり、これを根拠に聖書およびキリスト教の優位性を示すことを目的に成立した。したがって、天地創造や大洪水よりも古い他民族の歴史を合理的に説明する必要に迫られた。紀元前3世紀頃のヘレニズム期バビロニアで著述されたベロッソスの『バビロニア誌』解釈が、普遍史構築上の問題点となった。カルデアの歴史を伝える『バビロニア誌』では、天と海が分かれて世界が成り立ち、最初の王朝はアルロス(アロロス、Aloros)から始まり10代目のクシストロス時に大洪水があり滅んだとある。この王朝は120サロス=432,000年間存続したとも記されており、どの聖書に基づいても天地創造と大洪水の期間よりも長かった。 これに対しエウセビオスは『年代記』にて、単純にカルデア人が単位「サロス」の計算を間違えていたと切り捨てた。それどころか逆に、クシストロスが神の予告を受けて船を建造し、大洪水の際に一族や動物たちと難を逃れ、鳥を飛ばして洪水の終息を確認したところなどを取り上げて、『バビロニア誌』にある記述はノアの大洪水を示していると解説した。成立年度から見れば『バビロニア誌』の内容が『旧約聖書』に影響したと考えるのが普通だが、エウセビオスは逆にバビロニア人が歴史を伝えるにあたり事実を劣化させてしまったものとして、聖書の真実性を裏付ける材料にした。
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